研究テーマのお味はいかが

「同僚から猪肉を分けてもらったんやけど、どうやって調理したらいいかな」仕事の休憩中であろう、30代のサラリーマンが店主に声をかける。それから「うちの父親も猪を狩るんですよ」「そういえば私こないだ、アナゴと間違えてウミヘビを食べちゃって」と、昼間から何やらワイルドな会話が飛び交う。

狭い店内の中央に配置された大きなテーブル。この場所は、常連さんも知らない人同士も一緒になって食事のひとときを共有するスタイルだ。「この近さは恥ずかしいから、改装したいんだけど」と店主は言うけれど、知らないお客さん同士で向かい合って食べる食卓は、屋台みたいで何だか楽しい。

 

 

レストランでも定食屋でもない、ここは「食堂研究所」。別府駅北高架商店街の近く、別府駅東口から歩いて4分ほどのところにある。

 

 

趣味が自転車だという「所長」の菩々山(ぼぼやま)さんは、野菜も魚も、食材は自転車で調達する。駅の近くのスーパーや市場、鮮魚店まで、ちりんちりんと走らせるのだとか。「無理なく、まわれる範囲でね」そう言いつつ、その自転車好きは子どもの頃からのようで、故郷の県南・臼杵市から熊本市内まで何時間もペダルを漕いだこともあるそう。

 

 

この店では、メニューは「研究テーマ」と呼んでいる。今日の研究テーマは、和風あんかけ(自家製手ごねしない)ハンバーグ、だそう。それに鶏ごぼうやポテトサラダ、ほうれん草の白和えなど、7〜9種類ほどの副菜から小鉢2品を選ぶ。プラス味噌汁とおしんこ。メニューに決まりはなく、おかずはすべて日替わりとのこと。

 

 

 

手元に置かれていたショップカードには、「山香米を最新技術で炊いてます」と書いてある。不思議に思って尋ねると、菩々山さんはにかっと笑みを浮かべて、炊飯器のほうを指差す。

菩々山さんのおすすめメニューはおかずではなく、意外にも「ごはん」だという。そういえば、お店の入口看板は大きな「しゃもじ」だったし、窓は「お茶碗」、ドアの取っ手は「お箸」だった。

 

 

食堂研究所のごはんは、山香米と呼ばれる、日出町の農家から分けてもらう無農薬の白米を使っている。立ちのぼる湯気の中から、炊きあがりのお米が顔を出す。おひつに移し、木製しゃもじで優しく掻かれると、粒のひとつひとつがしゃんと立って、光沢を増す。「だって、ごはんがおいしくないと、おかずが食べられないでしょう」飄々とした物言いで言われてしまうと、思わず頷いてしまう。

 

 

食事を終える頃、生まれた土地の話になった。もともと郷土料理を研究しているという菩々山さんは、全国いろんな地域にまつわる料理の話をしてくれた。「大分はもちろんだけど、今は山形の『だし』にはまっていてね。いつか全国の郷土料理をメニューとして出せたらいいな」

夢中で話を聞いていたら、食後のコーヒーも温くなってきた。最後の一口をぐっと飲み干して「ごちそうさま」と手を合わせた。

食堂研究所

ショクドウケンキュウショ

住所別府市駅前本町9-7高崎ビル1F
営業時間火〜金曜 昼ごはん11: 30〜14:30(L.O.)
休日土、日、月曜
電話番号別府市駅前本町9-7高崎ビル1F
駐車場なし
オススメ
商品
昼ごはん(最新技術の白ごはん+おかず) 800円〜