宝石箱

 

富士見通りの山の手側から脇道を入ったところに『菓子工房トロアベリー』がある。まるでおとぎ話に出てくるような三角屋根の建物の扉を開けると、ふわっと甘い香りが漂ってきた。店内にはゆったりとしたオルゴールの音色が聞こえ、別の世界へ入り込んだような気分になる。

 

 

 

ショーケースに並ぶのは、凜とした佇まいのオペラ、薄いカラメルをまとった艶やかなシブースト、形の整ったメレンゲ・シャンティー・カラメルなど気品あるクラシックケーキから、イチゴを使った華やかなケーキまで数多くあり、どれも輝きを放っている。「毎日18種類ほどのケーキを作っています。うちは季節の果物を使ったケーキが特に人気なんですよ。冬はイチゴ、夏はモモですね」と話すのは、店主の村田和之さん。ショーケースの中で待つ予約の誕生日ケーキにもイチゴが溢れそうなど乗っている。

 

 

 

「この店を始めて10年になりました。地元のお客さんもよく足を運んでくださいますし、SNSの当店のページにケーキを紹介するようになってから、県外や海外のお客様まで来てくださるようになりました。だけど、作るのは私1人しかいないから、お断りすることもあって申し訳ないですね」と言うように、村田さんは前日から仕込みを始め、毎朝早くから厨房へ入るという日々の繰り返し。夏には大量のモモの皮むきを、奥さんのさおりさんと娘さんが手伝ってくれるそう。

「ケーキはレシピ通りに作ればいいというものではなくて、その日の天候や湿度などによっても微妙に配分を変えるんです。その都度、味を確かめながら作っていますね」と、村田さんは常に細やかな調整に神経を研ぎ澄ませているようだ。目を輝かせながら話す村田さんの隣で、微笑みながら相づちを打つさおりさん。何でも包みこんでくれるようなご夫婦だ。

 

 

 

村田さんご夫婦は北九州の出身。結婚した当初は、村田さんは北九州でトラックの運転手をしていたという。「将来は喫茶店をやりたいなという漠然とした夢があったんです。それにはまずケーキを作れた方がいいだろうという考えがあって」。その思いを後押したのはさおりさんだった。知人に紹介された福岡にある有名洋菓子店のケーキを食べて感動し、村田さんはその店で修業をすることを決意したのだそう。運転手の仕事を辞め、当時1歳だった長女を連れて家族で福岡へと引っ越した。「もう後戻りできないでしょ。前に進むしかないなと思って。そしたら、作ることの面白さや奥深さにハマっていったんです」。
その後、他の場所でも経験を積み、別府で店を開いた。別府を選んだ理由は、温泉が好きでよく訪れていたからだそうだ。

オープン間近に決まったという屋号には、村田さんご夫婦に3人のお子さんがいることから、3という意味の『Trois』をどうしても入れたかったのだという。「これは、名前のイメージから私が絵を描き、娘と彫って仕上げたものなんです」と、村田さんが指さした先にあったのは、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーの3つのベリー、つまりTrois Berryが仲良く並んだ木彫りの板。家族で作ったこの看板がいつも見守っているかのようだ。

 

 

平日でも途切れることなく訪れるお客さんを見るともなく見ていると、ショーケースの前に立つとき、皆一様に同じ表情になることに気がついた。少しかがみ気味の姿勢になり、どれにしようかとケーキを見つめるとき、誰もが瞳を輝かせている。明るいその表情が見つめる先には、色とりどりのケーキが、それぞれの輝きを放って並んでいる。それはまるで、村田さんとご家族の愛情がぎっしりと詰まった宝石箱のようだった。

 

Trois Berry

トロアベリー

住所別府市山の手17-1
営業時間11:00〜19:30
休日月曜
電話番号0977-23-8366
駐車場3台
オススメ
商品
トロアベリー 406円 和栗のモンブラン 510円