緑に囲まれ、すぐ横を柴石川が流れる柴石温泉。醍醐天皇や後冷泉天皇が湯治したという言い伝えもあり、療養効果の高い温泉地として古くから知られている。江戸時代に「柴の化石」が見つかったことから「柴石」と呼ばれるようになったと言われている。

女湯ののれんをくぐると、ちょうど常連さんたちの一番風呂が終わる頃だった。ほんのりと肌を上気させた先客たちが、口々に「おはよう」「お先に」と挨拶をくれる。「今日の露天はいい湯加減よ」と声を掛けてくれたのは、ほぼ毎日ここに通っているというお母さん。

大きな窓から自然光をふんだんに採り入れ、広々とした内湯には、あつ湯と普通湯の2つがある。普通湯で身体を慣らしてから、濃い湯気の上がるあつ湯にも浸かってみる。ちょっと熱いけれど、やわらかくて心地よいお湯だ。露天風呂は少しぬるめで、外の緑を眺めながらいつまでも浸かっていたい気分になる。温泉熱を利用した蒸し湯でたっぷり汗をかいたあと、風にあたりながら入浴できるのもうれしい。

210円でこんなに充実した温泉施設が楽しめるのは、別府の市営温泉だからこそ。
川沿いに今も跡が残る滝湯のことを尋ねると、昔は湯船からタオルを巻いて、滝湯まで行っていたとのこと。お風呂から滝湯まで、ざっと50メートルはあり、今では到底考えられない話だけど、そんなのどかな頃をちょっとうらやましく思った。




