ガラス戸を開けると「高等湯」「並湯」と書かれた、2つの入口があった。迎えてくれた番台さんに「高等湯にはあつ湯とぬる湯がありますよ。並湯はちょっと熱めよ。熱いお湯は大丈夫?」と尋ねられた。少し迷いながらも、並湯を選択。タオルと石鹸をお願いすると、番台さんの手元には何やら小さなプレート。聞けば、このカラフルなプレートで売り上げを集計しているのだとか。
のれんをくぐった先には、ピンク色に染められたお風呂場があった。赤、青、ピンクに黄色、色とりどりのガラスをすり抜けた光が、おだやかにお風呂場を包んでいる。かかり湯でお湯の熱さを馴染ませながら、体を清めて湯船へ。お湯の響きが高い天井にこだまする。お湯の静かな流れに身をゆだねていると、まちの真ん中にいることを忘れてしまう。
温泉成分に染められた湯船が、大正13年生まれの永い時を物語る。この温泉は、温泉の神様・薬師如来からいただいた「薬師温泉」として誕生し、「北町温泉」「駅前高等温泉」と名前を変えて育ってきた。木造の建物が建ち並ぶ景色の中、ドイツ建築様式のお洒落な温泉はまちのみんなの自慢だったそう。子どもも大人もこぞってこの温泉に訪れては、温かなお湯を楽しんでいた。「高等」の名前はみんなの自慢の証。
お風呂に来てみんなでおしゃべりするのが楽しみなんだと、にこにこ笑うお母さん。「用事があって来られないときは、『今日は行かんよ』ってここに電話するんよ。こんとみんなが心配するけんね」お湯の中で心と心が行ったり、来たり。やっぱり温泉はみんなで入るのが一番。
「気持ちよかったかい?」番台から声を掛けてくれたおじいちゃんは管理人さん。昭和10年代からずっと通っている筋金入りの常連でもあった。子ども時代、ここら一帯は空き地で、ビリヤードのお店とこの洒落た温泉があった。当時はまだお風呂の数も少なくて、とにかく多くの人たちがここに集まってきていたのだそう。「この温泉のおかげで恩恵をたくさん受けた。この高等温泉は、駅前町の宝。だから大事に残していかんと」そう愛おしそうに話してくれた。管理人さんをしているのには、そんな恩返しと恩送りの気持ちがあるのかもしれない。おじいちゃんが繰り返した「このまちの宝だ」という言葉が忘れられない。駅前高等温泉は昔も今も、これからも、このまちの暮らしの真ん中にある。
別府の魚は親父の方が詳しいです
お客さんが絶えない活気ある店内の生簀(いけす)にはフグに車えび、たくさんの魚がゆうゆうと泳いでいる。その中にさかさまになった魚が! 思わず声を上げると「卵がいっぱい入ってて、重たいんですよ」と厨房の中から板前さんが教えてくれた。
カウンター席に陣取り、おすすめの海鮮丼定食を注文。料理を待っている間、板場で黙々と魚をさばいている姿から目が離せない。魚は手際良くさばかれて、あっという間に見慣れた切り身の姿になった。
もともと魚屋さんだったお父さんと板前の息子さん。2人で板場に立っている。「やっぱり別府の魚は親父の方が詳しいです」セリでお父さんのお眼鏡にかなった魚を、息子さんがどう調理するか考えるのだという話を照れくさそうにしてくれた。お互いかけがえのない存在なんだろう。
出来上がった海鮮丼はすし飯が見えないくらいに海の幸がのった贅沢な丼。「仕入れによって中身は変わるけど、たいてい12〜13種類、すじのいいのが多いときには20種類くらいのるときもあるよ」とお父さん。
醤油をかけるのではなく、つけながら食べるのがひとつひとつの味を楽しめる食べ方なのだという。定食には旬の食材を使った汁物と小鉢が2つも付いてきた。
カメラが趣味という息子の勝企(まさき)さんは、板場でもデジカメをぶら下げている。料理を写真に記録したり、盛り付けの研究をしたりしているという。撮った写真はブログにアップしているそうだから、帰ってチェックしてみよう。
「本当にお腹いっぱいです。ごちそうさまでした」
海鮮いづつ
カイセンイヅツ
住所 | 別府市楠町5-5 |
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営業時間 | 11:00〜15:00/18:00〜23:00(LO22:00) |
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休日 | 月曜 |
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電話番号 | 0977-22-2449 |
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駐車場 | なし |
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オススメ 商品 | 海鮮丼定食 1,058円 |
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