昼どきになると行列ができる冷麺専門店。順番待ちの紙に名前を書いた人たちが公園でくつろいでいる。ようやく店内に入ると、親子連れや仕事の合間の食事など、幅広い世代のお客さんが席を埋めていた。

かつて松原公園の近くに冷麺で有名な店があった。当時、全国的には知られていなかった冷麺だが、その店の冷麺を食べた別府っ子はみんな大好きになったそう。転勤などで別府の血を離れて行った人も、忘れられずにその店を訪れていたとか。「六盛」の冷麺は、およそ40年前にその店で食べた味を再現しようと試行錯誤して作ったのだそうだ。

「父親が食通で、おふくろを連れて美味しいものを食べに行ってな、帰って来てから今の料理を作ってみろって。薬味ひとつにしても一般家庭の料理を超えるようなものを、おふくろは熱心に研究してて…。それに感化されてるのかな? どうしたら美味しくなるか常に考えるんですよ。この冷麺を作るときも、醤油の配合だとか塩の塩梅、いろいろ試してみたけど、やっぱりシンプルな味がいいね。いらないものを省いていったらこの味になった。キャベツのキムチも酸味が効いてて、歯ごたえがいいでしょ? 他の地域は豚のチャーシューが多いけど、牛の油っけがない所を使ってるんよ」。「六盛」の冷麺は、さっぱりとしているけれど奥深く、食べ進めるほどに後を引く。昼の営業時間が終わる前にスープが切れてしまい、閉店してしまうことも度々あるという。


息子さんが切り盛りしている北浜のお店は19時からの営業で、小盛りの冷麺が人気だという。「夜飲んだ後に付き合いでくる女性なんかは、1杯まるまるは食べられないでしょ、そんなお客さんに喜ばれているんですよ」。美味しいものを美味しいだけ食べられるようにという、うれしい心遣いだ。