竹瓦小路には良い香りが漂っていた。木のぬくもりを感じながらアーケードを進んでいくと、小路の先に何かの皮がこんもりと盛られたザルが置かれていた。「塩月堂」と書かれたお店に入って話を聞くと、ざぼんの皮を干しているのだという。ショーケースの中には、ゆずやざぼんを使ったお菓子や入浴剤などが並んでいる。
店内に飾られたモノクロ写真には、昔のお店も写っていた。「大正初期」と書かれた写真に写るのは、着物に身を包んで歩く女性たち。「お店の前は『流川通り』といって、昔はすごく栄えていたんです」と、ご主人。写真に写っている橋の欄干の一部は、今も残っているのだそう。お土産に、と買ったゆずまんを片手に、今は車と人が行き来する流川通りを足早に渡る。昔は雅な通りだったのだろう。