このまちの宝

別府駅から歩いて3分。建ち並ぶ四角いビルたちの中に、1つだけ、お洒落な三角帽をのせたレトロな洋館。白壁に緑色のトンガリ屋根。大正浪漫をまとった姿に思わず足を止めてしまった。見上げた建物の右側には「駅前温泉」、左側に「高等温泉」の文字が堂々と掲げられている。

 

 

ガラス戸を開けると「高等湯」「並湯」と書かれた、2つの入口があった。迎えてくれた番台さんに「高等湯にはあつ湯とぬる湯がありますよ。並湯はちょっと熱めよ。熱いお湯は大丈夫?」と尋ねられた。少し迷いながらも、並湯を選択。タオルと石鹸をお願いすると、番台さんの手元には何やら小さなプレート。聞けば、このカラフルなプレートで売り上げを集計しているのだとか。

 

 

のれんをくぐった先には、ピンク色に染められたお風呂場があった。赤、青、ピンクに黄色、色とりどりのガラスをすり抜けた光が、おだやかにお風呂場を包んでいる。かかり湯でお湯の熱さを馴染ませながら、体を清めて湯船へ。お湯の響きが高い天井にこだまする。お湯の静かな流れに身をゆだねていると、まちの真ん中にいることを忘れてしまう。

 

 

温泉成分に染められた湯船が、大正13年生まれの永い時を物語る。この温泉は、温泉の神様・薬師如来からいただいた「薬師温泉」として誕生し、「北町温泉」「駅前高等温泉」と名前を変えて育ってきた。木造の建物が建ち並ぶ景色の中、ドイツ建築様式のお洒落な温泉はまちのみんなの自慢だったそう。子どもも大人もこぞってこの温泉に訪れては、温かなお湯を楽しんでいた。「高等」の名前はみんなの自慢の証。

 

「駅前高等温泉」の入り方

 

その1、用具はイスと洗面器のみ。アメニティはご自身、または番台で

その2、立ったままのかけ湯はやめましょう

その3、洗髪料は20円

その4、湯船の中に源泉の注ぎ口があります。熱いのでご注意を

その5、熱さが苦手な方は、「高等湯」のぬる湯がおすすめ

その6、脱衣所に上がる前に体の水滴をよく落としましょう

 

みんなの温泉です。

ルールを守って気持ち良く、楽しく入りましょう。

 

 

お風呂に来てみんなでおしゃべりするのが楽しみなんだと、にこにこ笑うお母さん。「用事があって来られないときは、『今日は行かんよ』ってここに電話するんよ。こんとみんなが心配するけんね」お湯の中で心と心が行ったり、来たり。やっぱり温泉はみんなで入るのが一番。

「気持ちよかったかい?」番台から声を掛けてくれたおじいちゃんは管理人さん。昭和10年代からずっと通っている筋金入りの常連でもあった。子ども時代、ここら一帯は空き地で、ビリヤードのお店とこの洒落た温泉があった。当時はまだお風呂の数も少なくて、とにかく多くの人たちがここに集まってきていたのだそう。「この温泉のおかげで恩恵をたくさん受けた。この高等温泉は、駅前町の宝。だから大事に残していかんと」そう愛おしそうに話してくれた。管理人さんをしているのには、そんな恩返しと恩送りの気持ちがあるのかもしれない。おじいちゃんが繰り返した「このまちの宝だ」という言葉が忘れられない。駅前高等温泉は昔も今も、これからも、このまちの暮らしの真ん中にある。

 

−今日得たもの−

駅前高等温泉の永い歴史物語

おじいちゃんの思い出

ぽかぽかの体

 

駅前高等温泉

エキマエコウトウオンセン

住所別府市駅前町13-14
営業時間6:00〜24:00
休日年2回
電話番号0977-21-0541
駐車場5台
オススメ
商品
あつ湯・ぬる湯 各200円(洗髪料別途20円)