今でこそ別府にはたくさんのイタリア料理店があるが、「スパゲッティが食べられる店」ではなく、家庭的であり大衆的な「イタリアンが食べられる店」の先駆けだった「カーサ」。シェフは、海外や日本の首都圏を転々とし、別府にイタリアンの食文化を持ち込んだ。本場のパスタやピザ、小皿料理のほか、郷土料理のとり天をトマトソースでアレンジした、別府らしい1品も。以前は汐見町に店があり、2016年の春、北浜に引っ越してきた。
厨房でピザ生地を宙に投げているシェフに、心の中で拍手を送りながら、ちらっと視線を横に移すと子どもの頃テレビで見て憧れた、大きなチーズの塊が目に止まった。「ラクレットチーズって言うんですよ。半円のチーズの断面を熱で温めて、いい具合にとろけて焦げ目が付いたところで野菜やバゲットの上にのせます」。ワインにとても合いそう。さっそく頼んでみたところ、ホクホクのジャガイモやキノコなどが盛り付けられたお皿が運ばれてきた。「目の前でお出しすると、みなさん感動してくれますよ。特に女性のお客さまからは黄色い声があがります。僕がキャー! って言われているみたいで、嬉しくなったりして」そう言いながら、ギャルソンがとろけたチーズをお皿に注ぐと、やっぱり思わず歓声があがってしまう。
アツアツのチーズをたっぷりとジャガイモに絡めて頬張る。塩気がきいたチーズは、思った通りワインと好相性だ。バゲットにチーズをのっけたり、チーズを絡めた野菜をバゲットにのっけたり、いろんな味わい方ができる。ラクレットチーズを堪能している間に、さっき宙に投げられていたピザが焼きあがり、別のテーブルへと運ばれていった。
「北浜カーサ」では、定期的に「旅会」なるものを開催している。これは素朴で飾らないイタリアの地方料理をワインとともに食しながら、旅するように楽しむ企画だ。日程が決まったら、店のフェイスブックで公開している。イタリア20州が順番にテーマとなる。参加すると、スタッフ手書きのお品書きが配られるのだが、紙にはその日のテーマとなった地方の特色や料理の紹介が書かれていて、まるで旅のしおりをもらった気分になる。もしかしたら、さまざまな人々が集まる別府だからこそ、リアルに「旅する空気」が感じられるのかもしれない。「別府の文化に根付くようなイタリアンを提供していきたいなあって」。お髭のシェフのそんな言葉に、湯あがりのおじさんたちが豪快に笑いながら、ワインをたしなんでいる光景がふと思い浮かんだ。
住所 | 別府市駅前本町1-5 |
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営業時間 | 18:00-深夜0:00 (LO23:00)、金・土曜-深夜2:00 |
休日 | 日曜 |
電話番号 | 0977-84-7724 |
駐車場 | なし |
オススメ 商品 | ラクレットチーズ 1580円 (2名) |