中に入ると、何だか異世界の香りがする。ターメリック色の壁に、天地があべこべの鏡。どこかの国の女性たちの写真。色とりどりの提灯に、レトロな扇風機やかき氷機。ガラスの青と白、植物の緑。きらきらと日が差し込み、いつか観た映画の中にトリップしたみたいな気分になる。
大学の建築科でまちづくり研究のために訪れて以来、人々に愛されながら、息づくように別府で暮らしてきた園さんと、立命館アジア太平洋大学入学をきっかけに別府に住み始めたベトナム人のフックさん。別府をこよなく愛する2人が出会い、2016年の夏に食堂を始めた。
ここを訪れるのは、観光客はもちろん、留学生やバックパッカー、地元の人たちまで層を問わない。97歳という常連のおじいさんは、今日もアボカドドリンクをごくり。
園さんとフックさん、2人の共通する想いは、年齢、性別、国籍、宗教を問わず、みんなで1つの食卓を囲うということ。それは、別府が培ってきた共同浴場のあり方と通じる。築100年を越える古民家を、地元の大工さんと自分たちで改装し、1つずつ食堂のイメージを組み立てていった。
注文したのは、チキンフォーにサラダとベトナムコーヒーがついたランチセット。米粉でできたフォー麺は色が透き通って、喉ごしがいい。ひよこ豆が乗ったサラダは、たっぷりの野菜が盛られ、彩り豊か。練乳を混ぜたまろやかなコーヒーは、食後にくつろぎの時間を添えてくれる。
園さんとフックさんには役割分担がなく、その時どきで、お互いができることをしている。みんなでごはんを食べるとき、少しずつお裾分けしたり一口もらったりして、語らいとともに胃袋の中に幸せな気持ちが満ちていく。例えるならば、そんな関係性だ。
このお店には、さまざまな土地から自然と食器が集まってくるのだとか。それは今まで世界のどこかで、数え切れない人たちの食事風景を支えてきたお皿やコップたち。「食器が変わったら、作る料理も変わってくる。流動的なものだろうね」
人が食べる行為を建築と捉え、食べ方そのものを提案し続ける園さん。自給自足の村を思い描き、「リブ・イン・ハーモニー(調和の中に暮らす)」という言葉を教えてくれたフックさん。クーポノスという店名は造語で、2人を示す新しい惑星の名前なのだそう。
2人にとって「スパイス」とは、単なる香辛料ではなくて、退屈しない生き方のコツ。人生にちょっとスパイスを加えると、人は元気になったり、癒されたりする。園さんとフックさんの存在こそ、別府のスパイスだ。クーポノスは確かに異空間だけれど、同時にここが別府ということを強烈に感じさせてくれる。2人の料理を食べると、しゃんと息が整って、心がしゃきっとする。ごちそうさまと告げて店を後にすると、ここからどこへでも行けるような気がする。
住所 | 別府市千代町11-25 |
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営業時間 | 11:00〜15:00 |
休日 | 火曜 |
電話番号 | 0977-75-8145 |
駐車場 | 2台(お店の斜め向かいにあります) |
オススメ 商品 | フォーのランチセット(フォー+サラダ+ドリンク)1080円 |