ここはもともと、別府駅界隈の物産店やホテルに卸すための会社兼製造元としてあったが「せっかくならば作りたてを、ゆっくり食べてもらいたい」と、会社を増築する形で作られたお店。
圭子さんのご主人・保史さんの父親にあたる創業者の中村 亨さんは、終戦前に満州から引き揚げたのち、新境地を求めて当時、観光客で賑わう温泉地・別府へとやってきた。さまざまな仕事で生き方を模索しながら、夫婦で知恵を絞り、今日の「中村家のかるかん」の原型ができあがった。
かるかんには大きく2つの種類があって、ひとつは「竿物」と呼ばれる棒状のもの。これが古来の姿で、鹿児島が発祥にあたる。当時は高級品で、お殿様に献上する特別な和菓子だった。やがて餡入りの「かるかん饅頭」が誕生すると、日常の和菓子として親しまれるようになった。江戸末期には、温泉の蒸気で蒸した「地獄蒸しかるかん」なるものが別府にもあったのだとか。
歴史のロマンを感じていると、圭子さんがかるかん饅頭ひとつと、温かいお茶を持ってきてくれた。
ころんとして、手のひらにすっぽりとおさまるサイズ。口に含むと、しなやかな弾力があって、食べごたえがあるけど優しい味わい。「かるかん(=軽羹)」とは言うけれど、意外にもお腹にしっかり残る。「原料は山芋、米粉、砂糖だけ。とってもシンプル、そのまんま」素朴だからこそ素材が引き立ち、深い味わいがある。
「この家に嫁いでから毎日食べているけれど、全然飽きないの。きっと相性が合ったのね。私にとって、ごはんみたいなものかしら」と、圭子さんは微笑む。
圭子さんは以前、かるかん好きの子どもの誕生日に何か作れないかとお客さんから相談を受けたそう。初めての注文で驚きつつ、二つ返事で快諾。スポンジケーキの型に入れて蒸し、特大の「バースデーかるかん」を仕立てたのだとか。「小さなお得意さまが、いつか自分で買いに来てくれますようにって願いを込めながらね」。
淹れてくれたお茶をすすっていると、奥から有志さんがやってきて、一風変わった食べ方を教えてくれた。「少し時間が経って乾いたものは、オーブントースターで少し焼き目がつくくらいに温めるとおいしいよ。表面がカリッとして、中はふかふか。コーヒーにも合うんよ」
おみやげにするつもりだったけれど、自分用にも多めに買って帰ろう。
住所 | 別府市石垣東6-8-14 |
---|---|
営業時間 | 8:00〜18:00 |
休日 | 水曜 |
電話番号 | 0977-25-8878 |
駐車場 | 5台 |
オススメ 商品 | かるかん饅頭 5個入り668円 / 8個入り1036円 |