自分の舌と感覚でおいしいものを

別府大学駅前の坂を少し登ると、アットホームな外観の一軒のカフェがある。サッシを開けて店内に入ると、奥のテーブルでは先客の女子大生4人がパフェを囲んでいた。

 

 

ゆったりと腰掛けたいすの壁面に展示されていたカプチーノアートの写真に惹かれて注文すると「イケメンさんと美人さんの顔は難しいけど、だいたい何でも描けるよ。何を描きましょうか?」と気さくな受け答え。

 

 

路地で見かけた猫の姿を思い出し、猫をリクエストすると、丁寧に淹れたコーヒーにふわふわのミルクを乗せ、そこに繊細な手つきで串を下ろして猫を描き始めた。数分待つと、ぴんと尻尾の立ったおすまし顔がカップの中にふわりと浮いてやってきた。見た目だけでなく、驚いたのはその味だった。ミルクによって引き立てられたコーヒーのコクが、口に含むたびにふくよかに広がる。

 

 

入り口のショーケースには、りんごや桃、ブルーベリーなど季節のフルーツをふんだんに使った、色とりどりのケーキやタルトが並ぶ。「アップルパイ」が気になったけど、あいにく今日は売り切れ。どれにしようか迷っていると、店主の堀さんが「べっぴょん カボスのレアチーズ」を勧めてくれた。大分県の特産カボスの風味がほのかに香る、しっとりしたレアチーズケーキだ。別府市のキャラクター「べっぴょん」をかたどったケーキは、食べるのがもったいないくらい可愛らしい。フォークを入れるのをためらいながらも、一口食べるとその美味しさに手が止まらなくなる。コーヒーとの相性も抜群だ。

 

 

コーヒー豆は、別府市内にある最高級豆を扱う喫茶店「珈琲専科 グリーンスポット」から取り寄せるブラジリアンブレンド。全国からいろいろ試してみたけれど、結局ここの豆がいちばんだったという。人気のカプチーノなど、ミルクとの相性が抜群とのこと。堀さんにとってグリーンスポットのオーナーは「何十年もの人生が、1杯のコーヒーからにじみ出ている。尊敬しますね」と敬う存在。

そこに、娘さんを抱っこした奥さんがお店に入ってきた。娘さんはカウンター越しにお父さんからバナナをもらい、うれしそうにほおばる。実は、娘さんの名前は、父親のように慕っている常連のおじいさんにヒントを得て付けられたのだとか。

 

 

季節感を大事に、自分の舌と感覚でおいしいものを選ぶ。それが堀さんのシンプルなこだわりだ。

「この仕事は、お客様の喜びがわかりやすいでしょう。自分の作ったケーキや淹れたコーヒーはおいしい。お店で食べてくれる人はもちろん、おみやげとしてこのケーキを買ってくれて、そのケーキを贈られた人の、喜んでいる表情まで想像できちゃう。すごいでしょう」。

 

 

次は農業がしたいと、夢を話してくれた。自宅の庭に「DIG農園」という畑を作っているのだとか。そこで採れた野菜をメニューに取り入れたいそう。堀さんの苗字をそのまま付けた「DIG coffee」。名前のとおり、尽きることない探究心がこれからも続いていく。

DIG coffee

ディグコーヒー

住所別府市上人南2組
営業時間10:00〜20:00
休日不定休
電話番号0977-67-0029
駐車場3台
オススメ
商品
べっぴょん かぼすのレアチーズ 420円