「このお店が好きな人が来てくれればいい。かえって目立たないようにしているんです」。飄々と答えるマスターの言葉通り、「Princess Kities」は大通りに面しているけれど、知る人ぞ知るお店だ。マスターは元ディスプレイコーディネーターとして東京で働いていた。ヴィクトリアンスタイルで統一された小物などは、ほとんどマスターが今まで買い集めていたものを持ち込んだのだそう。

「転勤で大分に来て、気に入ったから住もうということになって。さて、仕事をどうしようかな、と。手先には自信があったし、喫茶店なら出来るかなと思って」。サンドイッチを作りながらも、なめらかに会話は続く。全てのメニューはマスターが手作りしているのだそう。「お客さんはそのことを知らないかもしれない。僕もそれを表に出すわけでもない。でも、それでいいんです。お客さんが美味しい!と思ってくれたら、それでいい。会話したり、気分を変えたりすることが出来る空間を提供することが目的なのだから」。大きな眼鏡の奥から、この空間への愛情が伝わってくる。

「ケーキにサンドイッチ、パフェも我流。他のお店でどう作ってるかって知らないんですよ」。テーブルに置かれた「キティーズパフェ」の大きさに思わず歓声をあげる。レアチーズケーキにアイス、そしてブルーベリーなど、口に運ぶたびに食感と味が違う。ラム酒が効いていて甘すぎず、あっという間に食べてしまった。

「100人の人が1回ずつじゃなくて、1人の人が100回来てくれるお店でありたい」とマスター。「こんにちは」と入ってくるお客さんたちは、ここがその言葉通りのお店だという証。「会話はしたことないけれど、その人が何を食べるのかも僕はすぐわかる」というマスターの言葉に優しさを感じる。
