そのころ、お父さんは毎夜オーブンの前でむずかしい顔をして、何か考えこんでいた。外国のケーキよりもっとふわふわやわらかくて、真っ白いクリームのたっぷり入ったケーキを作るんだって。粉と卵と砂糖と生クリームの空き箱がどんどん積み重なって、ある日お父さんは渦巻き模様の丸太みたいなケーキを食べさせてくれた。それは今まで見たことがない、フルーツもクリームの飾りもないのっぺらぼうなケーキ。だけどこれまで食べたどんなケーキより美味しかった。
お父さんの元には色んな所から菓子職人を目指すお弟子さんが来ていた。遅ればせながら美味しいケーキを作れるようにと、男の子も遠くのケーキ屋さんへ修業に出た。いよいよお父さんの元で修業だと、戻ってきたが同じ厨房に立てた時間はとても短く、お父さんの味の全てを教えてもらうことはできなかった。お父さんが厨房に立てなくなったとき、心配して助けてくれた兄弟子が残してくれていたレシピをもとにケーキを作った。小さいころからずっと食べ続けていた味を覚えていたおかげで、不思議とお父さんの味に似ていた。
お父さんとのお別れのとき、お父さんのお友達や先輩などたくさんの人が集まって昔の話を聞かせてくれた。「初めてロールケーキを作ったのは君のお父さんなんだよ」お父さんが夜遅くまで作っていたあのケーキ。知っているようで知らなかったことが繋がる。遠回りしたけれど、お父さんのケーキは職人さんの手から手へとしっかり受け継がれている。
住所 | 別府市中央町2-2 |
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営業時間 | 10:00〜19:00 |
休日 | 水曜 |
電話番号 | 0977-22-8540 |
オススメ 商品 | ロールケーキ 1,200円 |