サロンのような古民家カフェ

車通りが多い道に面した、趣深い屋敷。田川の炭鉱主の別荘だったという、古い屋敷を改装した「茶房 信濃屋」だ。「靴のままどうぞ」と声をかけてくれたのはこのお店のママ。「元別荘だけあって天井が高いでしょ? 格子戸もガラスも昔のままなのよ。戦災を免れた上に、大きな地震もなかったから、こんな古い家がそのまま残っているの」。庭木のおかげで、強い風から守られたという手作りのガラス窓からは、やわらかな光が射し込んでいた。

 


築80年ほどの屋敷を30年前にお父さんから譲り受けたというママは、子どもたちが安心して食べられるメニューを出すお店にしたいという思いはあったものの、当初はこの建物を残すつもりはなかったという。「でも、床の間なんて崩せないじゃない。だからもう。残すことにしたの」。古い建物の手入れをしながらカフェをしているうちに、別府の歴史とともに建物を残していくのも大切なことだと考えるようになったそう。「改装のときイメージしたのは鹿鳴館。特にこだわったのが照明なの」と指差したのはお店の中央。10人近くが席に着くことができる円形のテーブルの上には、直線を基調としたシャンデリアが下がっていた。日本家屋に合うように、と明治時代の資料を集め特別に作ってもらったのだという。

 


旬のものを食べて、季節を感じてもらえるとうれしいから、信濃屋の料理は野菜が基本。運ばれてきた団子汁からは特別に調合しているという味噌の香りがふわりと漂う。小麦粉と水と塩だけで作るシンプルなだんごはひとつひとつ手延べで作られていて、もっちりとしたどこか懐かしい味。野菜のシャキシャキした歯触りに何かコツがあるのか尋ねると、研究したからねと、ママは微笑んだ。古い建物に手を掛けるように、口にするものにも手間を惜しまない。訪れる人を心から落ち着かせてくれる場所だった。

 


サロンのようなこの部屋以外にも、広い座敷や個室として利用できる和室があり、予約すれば団体での利用にも対応できるという。時間を気にせず、大切な人とのんびり過ごしたい空間だ。

茶房 信濃屋

サボウ シナノヤ

住所別府市西野口町6-32
営業時間9:00〜21:00※火・水曜は〜18:00
休日なし
電話番号0977-25-8728
駐車場8台
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商品
だんご汁定食 850円