別府温泉発祥の地との呼ばれ、1400年の歴史を持つ浜脇温泉。昭和の始めごろは大きな旅館が立ち並ぶ賑やかな温泉地だったという。
現在は住宅街となったまちの中でも、あちこちで当時の面影を残した建物を目にすることが出来る。その浜脇の中心部にある「トムヤムクン」は、10席程度のこぢんまりとした小さなお店。メニューがなく、昼はふらりと立ち寄れるが夜は完全予約制。取り分けてシェアするタイ料理のフルコースを囲んで、タイのお酒で乾杯するのはとても楽しそうだ。
オーナーシェフの後藤さんが１人で切り盛りするタイ料理レストラン。15歳から洋食の修業を重ねたという後藤さんはタイに行ったことがないそうだ。「料理を見て、食べて想像するんです。せっかく修業したんだから洋食のシェフが作るタイ料理にしたくて」。オリジナルパッタイは、濃厚だけれどもタイ料理らしい爽やかな後口で、ここでしか食べられないものだった。

「この辺りでタイ料理って珍しがられるんですけど、他にそんなお店がないからこそがんばれます。タイだけじゃなく、この辺りをアジア料理のメッカに出来たらいいな」。後藤さんは、料理と同じくらい爽やかな笑顔でそう言った。