自然の厳しさと向き合いながら、温泉の恵みに感謝しているんですよ

「たまごサンドが昔から大好きだったんですよ」と語るのは、湯の花小屋が立ち並ぶ明礬温泉エリアにある『岡本屋売店』の岩瀬さん。「でもね、前から見たらたっぷり入っているのに、封を開けたら具が少ない! なんてこともめずらしくなくて。あれ本当にがっかりするんですよ。だからうちのには、たまごをぎっしり詰めたんです」。温泉の蒸気で蒸した『地獄蒸したまご』を2~3個も使った『地獄蒸したまごサンド』は、岩瀬さんの理想のたまごサンドとして生み出された。


 

『岡本屋売店』の広い駐車場からは市街地が一望できるので、遠くに見える別府湾や湯けむりを背景に写真を撮る人も多い。
車を降りると、濃厚な硫黄の匂いに包まれた。聞けば、このエリアには鉄製品がすぐに錆びてしまうくらい強烈な温泉成分が空気中に漂っているのだという。でも、そのおかげでコクのある『地獄蒸したまご』ができるのだ。
「温泉があるから仕事ができる。自然の厳しさと向き合いながら、温泉の恵みに感謝しているんですよ」


 

岩瀬さんのお父さんが『岡本屋売店』を始めたのは40年前。当時は観光より湯治目的の人が多く、明礬行きのバスは2時間に1本程度しかなかったという。『岡本屋売店』は、温泉ブームによって盛りあがったり、不景気で観光産業全体が下降気味になったりと、移り行く時代の中で変化しながら徐々に大きくなっていった。観光客はもちろん、地元のお客さんが足繁く通い、県外の親戚や友人を連れて来るなど、人が人を呼ぶようになったのだそう。



遠方からもわざわざ訪れる人がいるほど人気が高い手作りの『地獄蒸しプリン』は、カスタードやコーヒーなどが並ぶほか、季節限定の味も登場する。そのプリンがまるごと乗った『地獄パフェ』や、500円で8~10ピースも入ったボリュームのある『とり天』など魅力的なメニューは、岩瀬さんの「お客さんを喜ばせたい」という気持ちを原動力に生み出されているのだろう。



お店の看板犬、チャーリー君は人と動物が大好きで、散歩嫌いの「犬っぽくない犬」。寒さに弱いので店内にいることも多いが、誰かが相手をしてくれないとすぐ寝てしまうらしい。
『地獄蒸したまごサンド』を注文し外の椅子に腰かけると、うれしそうに尻尾を振るチャーリー君がやってきた。一切れが分厚くずっしりと重いけれど、食感は軽いサンドイッチをひとくち頬張る。「この景色の中で、この場所ごと味わってもらいたいんです」と語る岩瀬さんの笑顔や硫黄の匂いとともに、シンプルな味わいが心にまで染み込んで来るようだった。

岡本屋売店

オカモトヤバイテン

住所別府市明礬3組
営業時間8:30〜18:30
休日無休
電話番号0977-66-3800
駐車場24台
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商品
地獄蒸したまごサンド 500円 ※税込価格