訪れる人の花

 

 

「材料は、メーカーにこだわるより、自分が美味しいと思うものを使っています」と、さらりと言う格好良さ。

加藤友紀さんがオーナーを務めるケーキ屋エパヌイールは境川近くの石垣東1丁目にある。近くの養鶏場から直送される新鮮な卵や、隣町で絞った牛乳など、加藤さんが選び抜いた新鮮な材料で作られているケーキは、一度に2つ食べられるほど軽くて優しい味わいだ。ミルクレープ、チーズケーキ、モンブラン、ピスターシュ・ショコラ、プリンにシュークリーム・・・・・・今日はどれとどれを選ぼうか。

 

 

優しい笑顔が印象的な加藤さんは、別府生まれ別府育ち。関東の大学を卒業し、会社員として働いていたそうだが、洋菓子の世界に興味を持ち、転職を決意。専門学校に通い、洋菓子店のある千葉県のホテルや韓国の洋菓子店で腕を磨いたのだという。

お店の名前の由来を聞くと、「旅行でパリに行ったとき、蚤の市で買ったお気に入りのハンコがあるんです。それをデザインに取り入れたくて」と加藤さん。そのハンコは『E』の文字をあしらったものだったので、Eから始まる店名を考えたのだという。「ÉPANOUIR(エパヌイール)」は、フランス語で「咲かせる」という意味だそうだ。

 

 

ちょうど、カスタードクリームを作るところだというので見せていただいた。厨房に入ると側面に「加藤豆腐店」の文字が入った『ばんじゅう』と呼ばれる蓋付きの食品用コンテナが目に飛び込んだ。「これは実家から借りているものなんですよ」と加藤さん。ご実家は別府市内で豆腐屋を営んでいるのだという。「それはスポンジケーキの乾燥を防いだり、持ち運びの時に重宝するんです」と話しながら、銅のボウルを直火にかけると、手を休めることなく材料を混ぜ続ける。その姿に、実家のごま豆腐づくりを手伝っていたという子ども時代の加藤さんのイメージが重なる。銅製のボウルは熱伝導率が高く、通常は火傷しないように軍手を何枚も重ねるというが、加藤さんはタオル1枚だけでこの作業をおこなう。クリームが完成に近づくと、もったりした質感になりホイッパーが重たくなってくるはずだけれど、加藤さんはその華奢な腕でいとも軽やかに仕上げていく。

 

 

一見控えめでおだやかな印象だった加藤さんだが、お話しを聞けば聞くほどパワフルで行動力があることに驚かされる。エパヌイールのケーキは店頭販売のみでなく、近くの喫茶店に配達したり、インターネットでも販売を行っているそうだ。また、糖分を気にする方のために甘味料を変えて注文を受けるなど、お客さんの声に耳を傾け、食べる人のことを思いながらケーキを作っている。「うちはリピートのお客さんも多いんです。閉店後に、リピーターのお客さんが店の戸を叩いて、急を要するからどうしても売ってほしいと頼まれたこともあったんですよ」と加藤さん。ここに通いたくなる理由は、人との繋がりを大事にしている加藤さんの人柄による気がしてならない。加藤さんの言う「自分が作るもので少しでも人の役に立てば」という思いが、訪れるお客さん1人ひとりの心に花を咲かせている。

 

 

ÉPANOUIR

エパヌイール

住所別府市石垣東1-4-20
営業時間11:00〜20:00
休日水曜日
電話番号0977-23-8012
駐車場3台
オススメ
商品
ミルクレープ400円 モンブラン420円 プリン300円 ※税別