思い出を連れて帰る

永石温泉近くの五叉路を山手方面に少し歩くと、白い猫の絵が描かれたガラス戸に出会った。車通りに気を付けながら、引き寄せられるように近づいてみる。

 

 

『SPICA雑貨店』のオーナー・高野豊寛さんは生まれも育ちも別府。実家はお店の目の前で表具屋を営んでいるのだという。『SPICA雑貨店』は、もともと表具屋だったおじいさんが作業場として使っていた場所なのだとか。小さい頃から、おじいさんやお父さんの仕事姿を眺めるのが好きだったという高野さん。掛け軸を丁寧に修復するなど、室内装飾にまつわる作業のようすを見つめながら成長した。「独特の古いもの、使い込まれて癖の出ているもの、風合いのあるものが好きですね」というのも、思わず納得してしまう。

 

 

店内は元作業場の名残りなのか、天井の鉄骨がむき出しになっている。床と柱に使われている木材や白い壁と調和して、心地のいい空間だ。高野さんをはじめ、奥さんのかおりさんやスタッフ全員が穏やかで、柔らかな雰囲気を作り出している。

 

 

高野さん夫妻のお店づくりの原点は、若い頃にしていた雑貨店めぐりの旅なのだという。各地のお店に出かけては、店主や作家と対話し、知恵やアイデアが形になっている「もの」の美しさや、「もの」にまつわる物語に耳を傾け、旅の思い出として購入して連れて帰る。その感覚が何より面白かったのだとか。

 

 

陶磁器、調味料、コーヒー、色とりどりの便箋、ハンカチ。キッチングッズ、リネン素材の洋服。奥行きのある店内は、どこを見渡しても胸が躍る。ふと脇に目をやると、小さな椅子に座って女の子と男の子が絵を描いている。お母さんはその姿を見守りながらも、店内で買い物を楽しんでいた。

 

『SPICA雑貨店』は、2015年に内装をリノベーションし、広い展示スペースを増設した。ここでは、いろんな作家の展示会を期間限定で開催しているのだという。作家とおしゃべりしながら展示会の企画が決まることもあるそうで、高野さんにとってはその「流れ」に乗ってみることが自然なお店のあり方なのだという。

 

 

「もの」の存在感を大切にしつつ、店全体を1つの「町」のように俯瞰しながら構成する。「次に自分は何を見たいのか。常にここにない要素を探しているんですよ」と高野さんは言う。

「ここに並べているものたちはすべて、私たちにとっての憧れなんです」高野さん夫妻が大切にしている「もの」や「人」への尊敬から、じっくり進化を続けているお店だ。

SPICA 雑貨店

スピカ ザッカテン

住所別府市立田町1−34
営業時間10:00〜17:00
休日水・木曜
電話番号090-9476-0656
駐車場5台
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竹かごのバッグ