できる場所を探していたんです

鉄輪に着くと、町じゅうの至るところから噴気があがっていた。路地のすき間から立ちのぼる湯けむりに覆いかぶさるように、猫が寝そべっている。メインストリートのいでゆ坂を下っていくと、辰巳屋旅館の1階にレトロな店構えの『与八郎Cafe & Sweets』がある。別府ソルパセオ銀座にある『パティスリー 夢の樹』の姉妹店として、2016年7月にオープンしたカフェだ。

 

 

朗らかな声で「いらっしゃいませ」と快く迎えてくれたのは、森川 真粧美さん。『夢の樹』のパティシエ・原田 修さんの妹にあたる。店名になっている『与八郎』とは、兄妹のおじいさんの名前なのだそう。店内のあちこちに描かれた、和装にシルクハットを被った紳士のイラストが与八郎さんなのだろうか。そう思って眺めていると「可愛いでしょう。祖父は着物も帽子も身に付けてなかったけどね」と、笑いながら教えてくれた。

 

 

「以前からお客さんが『座ってゆっくり食べられるといいなぁ』と話していらっしゃって。実はもう何年も、別府でカフェができる場所を探していたんです」と真粧美さん。

 

 

ショーケースには約10種類のケーキが並ぶ。オリジナリティ溢れる個々の出で立ちは、修さんが長年磨いてきたセンスの賜物。『与八郎』でしか食べられないケーキを置いているところがこだわりだそう。

しばらく見惚れつつ、可愛らしく華やかな見た目に惹かれて『スイートオーブ』を注文。球状になったホワイトチョコの器をそっと割ると、中からいちごクリームとスポンジが現れた。クリームと3種のベリーを絡ませながら、少しずつナイフで切り崩していく食べ方も楽しい。

ケーキとセットで注文したコーヒーは『湯けむりブレンド』。市内の焙煎屋さんから仕入れた豆を使用しているそうで、甘みとコクが調和した柔らかな味わいだった。

 

 

これまでは店舗販売のみだったので、お客さんからケーキの感想を聞くことがほとんどなかったという。だからこそ、『与八郎』では「おいしかったです」と声をかけてもらえることが、何よりうれしいことなのだとか。「お客さんたちがケーキを食べている姿を見ていると、自然と改善点を見つけられるんですよ」と真粧美さん。

 

 

真粧美さんは生まれも育ちも別府だけど、店をオープンするまで、鉄輪に来る機会はなかったという。地域のことや温泉について、近所の人たちが教えてくれるのだそう。「この近くに『すじ湯温泉』があるんです。手や足の筋にいいって聞いて、年じゅう通っているんですよ」。

 

 

「いつか『与八郎』があるから鉄輪に行こう、と思ってくれる方ができたらいいな。あまり急ぎすぎず、ゆっくり進化していけたら」と話す真粧美さん。湯けむりの町ならではのゆったりした時間に身を任せられる、素敵なカフェだ。

与八郎 Cafe & Sweets

ヨハチロウ カフェ アンド スイーツ

住所別府市鉄輪風呂本1組
営業時間10:00〜18:00(L.O.17:30)
休日10月〜2月:火、水曜 / 3月〜9月:水曜
電話番号0977-27-7002
駐車場2台
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ケーキセット