思わず見過ごしてしまいそうなビルのドアを開け、思い切って一歩足を踏み入れてみると、心躍らずにはいられない空間が広がっていた。
竹トンボや水鉄砲などの懐かしいおもちゃや民芸品に、おたまやお箸、木べらなどのキッチン用品。そして職人やアーティストによる見惚れるような竹工芸が陳列されている。
「横にいるけど向です!」と、隣に並んでお茶目な自己紹介をしてくれたのは、『竹苑』の社長の向 功彦(かつひこ)さんだ。『竹苑』はお酒好きで面倒見のよかった義理のお父さんが開業し、もう50年以上になるのだという。「会社を大きくしたのは僕だけどね。商品をパッケージしたり、根付の紐を付けたり、ネーミングセンスが悪ければ名づけだってするんだよ」そういってニコっとするいたずらっぽい笑顔がとってもキュート。
先代が現役だった頃は、営業のために年の半分は県外へ出張してばかりだったという向さん。出張先での面白いエピソードも惜しげもなく披露してくれた。次から次へとネタが飛び出し、楽しいおしゃべりが止まらない。
ギャラリーでは、カタログで注文するよりも割安で商品を購入できる。一番の売れ筋はお箸。ここには姉妹旅行などで訪れる人も多く、「あんたのとこは息子2人と旦那だから、はい、3本!」なんてやりとりが日常的に展開されるそう。親子とも夫婦とも違う関係をいいなと思い、自身も兄弟旅行をするようになったと語ってくれた。「ここじゃなんだから、こっちおいで!」と応接室に通され、淹れてくれたコーヒーは喫茶店顔負けの深い味わいだ。
館内の奥のスペースに並ぶ竹製品は、一見してわかる高級品。特に大分県内の一流作家による「匠―TAKUMI―」のシリーズは、思わず息をのむ芸術作品であり、日用品であり、道具でもある。あまりにもつるつる滑らかに光って、プラスチックのように見える竹のざる。ため息が出るほど美しい編目の竹バッグ。手に取ると、あまりの軽さに驚いた。
大分県の竹は真竹(マダケ)といって竹細工に向いているのだという。だから別府の竹細工は、昔から編組の技術が優れているそうだ。
落としても踏んでも平気なのに、とても軽くて繊細。ギャラリーでたくさんの竹製品を眺め、手に取っているうちに、その魅力の深さににすっかり引き込まれてしまった。決して安くはない商品も、職人の技に惚れ込んで購入する人が少なくないという。
ふとガラスケースが気になって覗いてみると、目を見張るほど細やかな仕事がなされている竹製品が陳列されてた。値段を見ると、なんと100万円以上。「みんな、ふーんって言って眺めていくけど、さすがに誰も買わないんだよ」そう言ってほほ笑む向さんは、少年のような笑顔だった。
住所 | 〒874-0919 別府市石垣東10丁目4-38 |
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営業時間 | 9:00-17:00 |
休日 | 土日・祝日 |
電話番号 | 0977-25-1611 |
駐車場 | 10台 |
オススメ 商品 | 箸400円~ |