軒先に掲げられた大きなのれんに染め抜かれた「ふんわりつぶつぶ 朝どら」がどうにも気になって、吸い込まれるように店を訪ねる。想像より広い店内に、たくさんの和菓子が並んでいた。季節感のある上生菓子やころんと可愛らしい餅菓子など、どれも食べてみたくなってしまい、なかなか選べない。『朝どら』は買うとして、あとは何にしようかな……。
真剣に悩んでいると、3~4歳の小さな女の子がおばあさんに抱かれてやってきた。お店に入るやいなや床に降り立ち、ガラスケースの前で釘付けになっている。何度も訪れているのか、すでにお目当てのお菓子は決まっているようで、おばあさんに可愛くおねだりしている。微笑ましい光景を横目に、ズラリと並んだ和菓子を再び眺めた。やっぱりどれも捨てがたい。
店内には和菓子の他にも、お赤飯や紅白饅頭などの慶事菓子も置かれている。「通年人気なのは『朝どら』ですね。多い日には500~600個売れることもあります」と、工場長の池島 圭さんが教えてくれた。どら焼きは進物用にも自宅用にも使え、老若男女から好かれるお菓子だという。
ごく稀に、店内にある長椅子に腰掛けてお菓子を食べていく人もいるという。低い位置に設けられた窓からは坪庭が眺められ、なんとも風流だ。
早速おすすめの『朝どら』をいただくことにした。包装紙を開けた瞬間、ふわっと漂う甘い香り。毎朝焼きたてを提供しているからこそ、この香りを楽しめるという。持っただけでわかる、ふっくらふわふわのどら焼きを半分に割ると、つやつやと黒光りするあずきがお目見え。豆のしっかりした食感が残るあんは、ほっと一息つきたいときにぴったりだ。
『朝どら』の隣に置かれていた『どら焼き』は、よりしっとりとした食感が楽しめて、日持ちもするという。2つを食べ比べてみるものもおもしろいかもしれない。
和菓子屋さんは、季節感も大切にしている。移ろいゆく四季の自然や風物詩をモチーフにした和菓子は、ため息が出るほど美しい。以前は新しい季節の訪れを知らせる意味も込めて、季節を少し先取りした和菓子を作っていたが、最近は今咲いている花、感じる季節感をそのまま表現しているという。今見えるものや感じるもののほうが、共感を呼びやすいと考えるようになったのだそうだ。「その方がお客さんの反応もいいしね」と工場長は笑う。
お店の奥にある工場では、数名の従業員さんたちが和気あいあいと作業していた。みんな仲良く働いている姿が印象的だ。
「茶郎のお菓子は、余計なものを加えずシンプルな材料で作っています。だから、どうしても日持ちはしないんです」。作りたての美味しい状態ですぐに食べていただく、これが基本姿勢なのだという。
飾らず、無理せず、ほっとできる和菓子たち。あの人に食べさせてあげたい、と誰かを思い浮かべてしまうような、優しい気持ちが湧きあがった。
住所 | 別府市石垣西10丁目6-5 |
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営業時間 | 9:00-18:00 |
休日 | 水曜日 月内に不定期で火曜日 |
電話番号 | 0977-22-4488 |
駐車場 | 5台 |
オススメ 商品 | 朝どら焼き 130円 |