ファンの皆さんに愛されて、やってこられました

 

夕暮れどきに駅前通りを歩いていると、これから夜をこの町で過ごそうとする人たちの群れとすれ違う。さまざまな店が並ぶ一角に、ひときわ明るい光を放つ建物があった。

 

 

長い髪をポニーテールに結わえた小学生の女の子2人が、お母さんと手を繋いで店に入っていった。その姿がとても微笑ましく思え、そっと後に続く。すると、スーツに身を包んだ男性が穏やかな声で「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。

 

 

川野支配人は福岡県出身。『ヒットパレードクラブ』がキャバレーだったころから勤めているという。当時、別府の繁華街には男性客が多かったという。「週末はお客さんで溢れ、とても華やかでしたね。お小遣いもたくさんもらったものです」と懐かしむ。

 

 

『ヒットパレードクラブ』がオールディーズの生演奏をするようになったのは1988年。前社長の深瀬町子さんが沖縄のライブハウスで女性が楽しむ姿を見て、別府にも女性が安心して楽しめるお店がほしいと思ったことがきっかけだった。その声を聞き、当時の社長で元音楽家の深瀬俊夫さんがライブハウスとして営業することに決めたのだという。『ヒットパレードクラブ』の魅力は、ヒットパレーダーズと呼ばれるメンバーたちが1950〜60年代のオールディーズの名曲を次々と演奏する、華麗なステージにある。

 

 

周りを見渡すと、平日だけれど既に多くのお客さんで賑わっていた。ふっとライトが消え、ヒットパレーダーズがステージに上がる。香水の香りと、少しの緊張感。お喋りを止めたお客さんたちの期待も重なり、お店の雰囲気ががらりと変わる。次の瞬間、ライトが照らされステージが始まった。

 

 

心が踊る華やかな場所だけれど、ここ数年は思いがけない不運が重なってしまったという。2014年に運営会社の経営不振によって一時閉鎖し、さらに2017年4月には原因不明の火災に見舞われた。とりわけ火災は『音楽博物館』と銘打っていた『ヒットパレードクラブ』にとって、これ以上ない打撃となった。著名人の写真やレコード、サイン色紙、椅子や机、大切な思い出が詰まった衣装や楽器まで、そのほとんどが消失してしまったという。

 

そんな危機を支えたのが「早く復活してほしい!」という、全国のファンの人たちの熱烈な思いだった。彼らの情熱を受け止めた『ヒットパレードクラブ』は火災からわずか3日後に、仮店舗での営業再開を果たす。そして9月には駅前通りに店舗を移転して、再び歴史の幕が上がった。

 

 

「ファンの皆さんに愛されて、何とかやってこられました」と川野さんは、あくまで謙虚な姿勢を崩さない。2度目の再開をきっかけに『音楽博物館ヒットパレードクラブ』から『別府ヒットパレードクラブ』へと改称された店名には、別府という町に存在する誇りと、応援してくれるファンの人たちへの恩返しの気持ちが込められている。

 

 

青いドレスを優美にまとうSANDAY(サンディ)さんは、火災の直後、現実と向き合うために、ヘルメットを被って店を訪れ、その惨状を目に焼き付けたという。もともと歌と踊りが大好きで、10代の頃に憧れて飛び込んだ夢の世界。今の自分に何ができるかと自分自身に問いかけながら、日々ステージに立っている。「お客さんのハッピーを手助けできることが、私の幸せ」と微笑んでくれた。

 

 

大人の色気が漂うGENE(ジーン)さんは「僕たちが歌う曲を、『懐かしい』ではなく『新しい』と感じる世代の人がいる。そうして見に来てくれる若い人たちに、受け継がれていくといいな」と、次世代のステージのあり方を慮る。「向こう100年続く『ヒッパレ』のために、1回1回を大切にしたいですね」。

ヒットパレーダーズの歌声や演奏に合わせ、徐々にお客さんたちもステージ前に集まってくる。老若男女問わず、思い切り踊れて楽しめる場所。「ここはどんなお客さんにも安心して楽しんでもらえる。それを守り続けてきました」と、川野さんは誇りを持つ。全国のみんなに愛される『ヒットパレードクラブ』は、2018年で30周年を迎える。

別府ヒットパレードクラブ

ベップヒットパレードクラブ

住所別府市北浜2丁目1-2
営業時間18:00〜00:00(ステージ 1st. 19:00~ 2st. 20:05~ 3st. 21:10~ 4st. 22:15~ 5st. 23:20~)
休日月曜(祝前日の場合は火曜)
電話番号0977-21-3166
駐車場なし
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入場料 女性3,000円/男性3,600円/4歳〜小学生1,000円/中学生2,000円/4歳未満無料(税込)※要予約