「ここは築110年を超える長屋の1室です。長い間空き家になっていたのですが、今は1階がセレクトショップ、2階にはアーティストのふすま絵を展示する空間として活用しています」と教えてくれたのは、このお店『SELECT BEPPU』を運営しているNPO法人BEPPU PROJECTの利光さん。
ここは約10年前、別府市中心市街地の活性化を目的に空き家をリノベーションし、工房やギャラリーなどさまざまな活動や発信のための場として活用するプロジェクトの一環で生まれた。のれんに書かれた言葉の意味を尋ねると、多様な文化や生活が混在する別府の町を美術館に見立てたとき、それに関連する商品や情報が集まるミュージアムショップのような存在であることがこのお店のコンセプトなのだと言う。
店内に入ると、木材がむきだしになった天井と白い壁に囲まれた空間にたくさんの商品が並んでいる。商品をゆっくり眺めてみると、古布を使った竹細工のバッグ、湯けむりをモチーフにした一輪挿し、別府の鳥瞰図をあしらった型染めの手ぬぐいなど、別府をテーマにしたものばかり。クラフト商品や工芸品など、手仕事で作られたものが中心なので、1つひとつ手に取って見比べながらお気に入りを探す。
古民家の風情が残る急な階段を上ると、2階には畳の部屋が2間。奥の部屋に進み、ふすまを閉じようと振り返ると、鮮やかなピンクの花の絵が目に飛び込んだ。この作品は、台湾の伝統的なテキスタイルをモチーフにしているのだそう。用意された座布団に座って、ゆっくり作品に向き合っていると、だんだん気持ちがほぐれていく。エキゾチックな花の絵は、斬新なのになぜか日本家屋によく馴染み、すりガラス越しの柔らかな光を受けて静かな空間を創りだしていた。
「観光客の方からおすすめの飲食店や温泉の情報を聞かれたり、近所にある美容室のお客様が待ち時間に立ち寄ってくれたりすることもあります。ここは、作り手とお客様と町の三者が出会う場所。ここを訪れたことで別府に興味を持って、町をめぐってもらえたたらいいなと思っています」と利光さん。
すると、1階の木戸が勢いよく開いた。「こんにちは」と元気な声の主は、常連さんらしい地元のおじさんだった。こうやってこのお店は、地域の人も旅行者も関係なく、訪れる全ての人びとを受け入れてきたのだろう。そして、これからも変わらずに人が交差する風景を見守り続けるに違いない。
住所 | 別府市中央町9-34 |
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営業時間 | 11:00〜18:00 |
休日 | 火曜(祝日は営業) |
電話番号 | 0977-80-7226 |
駐車場 | なし |