ずっと眺め続けてきた

 

駅前通りを海に向かって歩いていて、立ち並ぶ飲食店のビルの切れ間をふと曲がってみたくなった。一方通行の細い道を少し行くと途端に視界が開け、大きな樹の下にたくさんの人が集う広い公園があった。風に揺れる木々の葉と芝生の緑の向こうに見える和風の建物から、お風呂道具を持った人が出てくるのが見えた。近づいてみると、のれんには『海門寺温泉』の文字。まずは入り口の『湯かけ地蔵』にご挨拶。ひしゃくでお湯をすくって、お地蔵さんの頭にかけ、手を合わせてからのれんをくぐった。

 

 

『海門寺温泉』は昭和11年に市営温泉となったという。時代の移り変わりとともに改築を重ねてきたそうで、現在の建物になったのは平成22年のこと。瓦屋根の1階建てで、車椅子や年配者の人でも入りやすいよう、入り口は緩やかなスロープになっている。

 

 

元気のいい番台さんは改築前からのベテラン。「昔の浴槽は深かったんよ。当時は2階に公民館があってね。空手部の学生さんたちがよく来てたわぁ」と、いつかの思い出を聞かせてくれた。

石畳が敷かれた浴場には、共同浴場には珍しくシャワースペースがあるけれど、浴槽からお湯をすくってかかり湯を浴びた。手前のぬる湯は想像していたよりも入りやすく、足を浸した瞬間から、やわらかくお湯が馴染む。奥のあつ湯はやっぱり熱い。再びぬる湯に戻って長湯を楽しむことにした。窓から差し込む光が、湯船の上で気持ちよさそうに揺らめく。

年配の常連さんは、この温泉にシャワーがあるのがお気に入りなのだという。「肩とか膝に当てると気持ちいいんよ」と豪快に笑った。

 

番台さんはお風呂から上がった人たちに「気持ちよかった?」と、1人ひとりに声をかけている。きっとその言葉は、長く番台をしてきたからこその、誇りと愛情が込もった口癖なのだろう。

休憩所の大きくて丸い窓からは、外の公園の風景が見える。隣の椅子に座っていたおばあちゃんが「私はね、ここから毎日景色を見るのが好きなんよ」と教えてくれた。

 

 

せっかくなので、海門寺公園を散策してみることにした。

体を前のめりにして生える松と、手を伸ばして捕まえようとするクスノキは、まるで鬼ごっこをしているよう。芝生の広場では元気に遊ぶ子どもたち。ひなたのベンチにはお風呂上がりのおばあちゃん。木陰では、おじさんたちが将棋を打っている。みんな思い思いに、この場所でゆったりとした時間を過ごしている。立派な幹の大きな樹々は、きっと何十年も前からここに憩う人々の姿を眺め続けているのだろう。

 

海門寺温泉

カイモンジオンセン

住所別府市北浜2-3-2
営業時間6:30〜22:30
休日年末大掃除日(不定)
電話番号0977-22-3625
駐車場3台(うち1台車椅子利用者用)/入浴者は「つるみカーパーク」1時間無料駐車可
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入浴料 100円