別府駅西口を出て坂道を上っていくと、手作り風のしいたけのオブジェが目に入った。視線を上げると、壁にはしいたけのイラスト。看板には「しいたけ直売所」とある。店内に足を踏み入れると、ガラスケースには乾しいたけが種類別に並び、棚には箱入りの贈答用乾しいたけ。お茶屋さんがお茶を売るように、いろんなしいたけがずらりと並んでいる。
しいたけ特有の香りに包まれた店内の一角では、乾しいたけの選別を行っていた。大きさによって仕分けて、計り売りするのだという。
壁にはしいたけの菌を植える「タネコマ」で描かれた山の絵。少し褪せてくすんだ色と、ところどころ取れてしまったタネコマの痕が味わい深く、時の流れを感じさせる。
大分県産乾しいたけ専門店『やまよし』は、創業50年以上。乾しいたけ専門の入札場でもあり、しいたけの卸問屋でもあり、自社生産もおこなっている。お店を支えているのは、代表取締役の河内聖藏さん、息子さんの河内由揮さん。お2人とも物腰が柔らかく、会話の様子から仲がいいのが伝わってくる。聖藏さんのおじいさんは、九州全土にしいたけの人工栽培を広めた1人だという。
「乾しいたけの旨みを十分に引き出すには、5℃くらいの水で8時間程度じっくりもどすのが一番ですね」と聖藏さんが教えてくれた。便利な食材や調味料はごまんとあるが、やはり一手間かけた美味しさにはかなわない。夜寝る前に乾しいたけを水に浸して冷蔵庫に入れておくと、翌朝には美味しい出汁が出て極上のお味噌汁が作れるという。
「若い人にはあまり見向きされないんですよ、しいたけって。僕自身、小さい頃は好物というわけではなかったです。でも歳を重ねると前より好きになったという人が多いですね」そうお話してくれた由揮さん。おすすめの食べ方を聞くと「どんこのバター焼きですね。油としいたけの相性がいいのでぜひ」と勧めてくれた。
しいたけをもっと身近にしたいと様々な作戦を練っているお2人。「パクチーくらいのインパクトがほしいですね。栄養もあるし、美味しいから、一度火がつけばみんな乾しいたけのすごさに気づくはずですよ」と由揮さん。すかさず聖藏さんが「『和牛よりしいたけ』なんて言う人もいるくらい、実は注目される可能性を秘めてるんです」と付け加え、しいたけに対する熱い思いを語ってくれた。若い人向けにスイーツ風のパッケージを作ったり、お店の改装を計画したりしているという。
たまにはじっくり時間をかけた料理を作ってみようかな、そんな密かな決意をして店を後にした。
住所 | 大分県別府市西野口町2-2 |
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営業時間 | 8:30~18:00 |
休日 | 日曜日 |
電話番号 | 0977-21-8111 |
駐車場 | なし |