ホテルのロビーは、床が畳張りになっており、スリッパもないので素足で畳の感触を味わえる。さらに目を引くのが全長15mにもなる竹のパーティション。15人もの竹職人が集まり、別府湾に浮かぶ太陽と月、さざ波をイメージして作ったという。
その奥には情緒あふれる日本庭園が見える。ロビーでは差し込んでくる陽の光に包まれ、裸足でゆっくりとくつろげる。
部屋へと進む途中、小さなカウンターに蒸し器が置かれていた。これは、宿泊客が自由に食べられる一口蒸しまんじゅうだ。大分名物のかぼすを使用したお菓子は、旅の疲れを癒すにちょうどいい大きさと甘さ。さりげなく特産品を取り入れた、細やかな心遣いが嬉しい。
エレベーターもなんと畳敷。生まれて初めての体験、なんだか楽しい。
「この宿の部屋や施設の名前には、すべて椿の名前がついているんです。私もこんなに種類があるなんて知りませんでした」そう教えてくれたのは、中村志保さん。
「ホテル自慢のウェルカムドリンクです」と差し出されたのは、料理長考案のゆずとはちみつで作られたドリンク。コロンとしたフォルムが可愛らしく、口をつけた時の丸みは牛乳瓶のよう。懐かしくて心が和む。さっぱりとしたドリンクの中には寒天のつぶつぶが入っていて、食感や喉越しも楽しい。どこで購入できるのか? とよく聞かれるこのドリンクは、宿泊したお客様だけが味わえる特別なものだという。
『乙姫』という椿の名の付いた温泉に入れば、またまた嬉しい驚きに出会えた。2つにわかれた浴槽の片方は、遠目には白く濁った湯に見えたが、微粒な泡をいっぱい含んだマイクロバブルバス。この微細な泡が温泉成分が肌に染込むのを促進するそうだ。浴室の奥にあるミストサウナの扉を開けると、豆タイルで鮮やかに描きだされた椿の花。広々とした露天風呂もあり、心ゆくまで温泉を満喫できる。
セレクトショップのような売店は作家さんの手作りの品が多い。ここでしか買えないもの、珍しいものが並べられていて心惹かれる。
売店の近くにある本棚を眺めていると、副支配人の野村考志さんが教えてくれた。「『花べっぷ』のマークのモチーフとなっているのが『べっぷ』という椿なんですが、別府には3本しかないと言われているんです。3月の初めごろに可愛らしいピンクの花をつけますよ。ホテルの入り口に植えられていますので、ぜひ時期になったら観にいらしてください」。
おしゃれなのに疲れない、可愛いのに甘すぎない、大人の女性が心からやすらげる宿だった。
住所 | 大分県別府市上田の湯町16-50 |
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電話番号 | 0977-22-0049 |
駐車場 | 15台 |