静かな進化を続ける老舗喫茶店

別府駅西口を背に坂道をのぼっていくと、年季の入ったビルの1階に正統派喫茶店が見える。山盛りに積まれたサンドイッチの食品サンプルは、絶大なインパクトだ。

 

 

お店では、常連さんらしき人とカウンターの中のお姉さんが話に花を咲かせていた。至るところにある手書きの文字やイラストがセンスあふれる可愛らしさで、見ていて楽しくなってくる。木彫りの店名もマスターの自作だというから驚いた。

 

 

「うちの『サンドイッチバイキング』は珍しいみたいで、喫茶店の雑誌を作っている人にも驚かれたことがありますよ。このアイデアはすごいから、東京でやりませんか?なんてね」。そんなお話をしてくれたのは、オーナーの足達博義さん。喫茶系の仕事に就いたのが60年以上も前のことだという。

 

「飲食店を経営する会社の社員として働きながら、有給休暇を使って東京・横浜・箱根なんかに行ってみたんです。するとね、郊外にもおしゃれな喫茶店がたくさんあるのを見つけて。これからは街中だけで喫茶店をやる時代じゃない、郊外でやるといいんじゃないかと」。

 

 

39歳の時、当時の別府では初めて、郊外である荘園地区でお店を始めた足達さん。周囲からは反対の声が大きかったが協力や応援の声もあり、オープンにこぎ着けた。いざ開店してみると連日の大盛況。後に続けとばかり、別府の郊外に喫茶店が立て続けにできたという。

 

 

「今の場所に移ったのはね、ビルのオーナーさんが困っていたから。いろんな人がこの場所で店をしてみたけど、なかなか長続きしないってね。お店の『青山』ってのは、地名じゃなくてコーヒー豆のブルーマウンテンからとったんですよ」。そんな歴史を聞きながら、『青山ブレンド』をいただいく。

 

 

ずっと喫茶店にかかわる仕事を続けてきた足達さんは、気づけばいつでも喫茶店のことを考えているという。「こんなに考えてばっかりやから髪の毛がないんかなぁ」なんて言いながら、頭を一撫でして笑っている。「この場所で開店してから、もう30年近く経ったけど、ずいんぶん寂しくなったよ。以前はこの通りに8軒くらいの喫茶店があったのに、今はうちともう1店くらいだから」ちょっぴりまゆげが下がって、切ない笑顔になってしまった。

 

 

「今は“おやつタイム”というのを考えているところ。昔ながらの喫茶店メニューのあんみつとか、白玉金時とか、クリームソーダとなんかをワンコインで食べられるようにしようかな、って」そう言ってまた、輝くようなにっこり顔に戻った。

 

手作業が好き、喫茶店が好き、そんな思いとマスターの人柄が随所にあらわれているような店内とメニュー。変わらないようでいて実は進化を続けているお店だ。まだまだ進化しなきゃな、そんな風に教えられた気がした。

青山コーヒー舎

あおやまこーひーしゃ

住所大分県別府市青山町7−58 青山ビル 1F
営業時間9:00~17:00
休日火曜日
電話番号0977-25-8098
駐車場4台
オススメ
商品
サンドイッチ食べ放題 コーヒー付き 1,000円/40分 (バイキングは14:00頃に終了)