大きなガラス戸に金色の文字で書かれた「バサラ」の文字に足を止めた。町の風景に溶け込んでいるようでいて、ほんの少し違和感が滲み出る古い建物。建物全体から、ただならぬ気配が漂っている。これは絶対おもしろい場所に違いない。
扉を開くと、古さと新鮮さが混ざり合った、刺激的なのに居心地のいい不思議な空間が広がっていた。いつの時代なのか、どこの国なのかわからないけれど、どこか懐かしい雰囲気だ。
いろんな時代の痕跡が残る壁が、この建物の歴史を物語る。それらをずっと支えてきた土壁や芯もところどころに覗いている。
のびのびと四方八方に枝葉を伸ばす植物、壁に取り付けられたたくさんの引き出し、深い飴色の使い込まれた机、アウトドア用のテーブルセット。ちぐはぐなようでいて、すべてがしっくり調和してこの空間を構成している。
もともと貸席で、その後クリーニング屋だったというこの建物は、築80年くらいになるという。「ピンクのところは貸席のときの壁の色、水色はクリーニング屋さんが塗ったみたい」不思議と落ち着く配色の壁を指さしながら教えてくれたのは、このスペースでカフェを担当する「たべもの建築家」の宮川 園さん。
「アーティストやお店を開きたい人が、お試しで住める場所があったらいいよねって話していたら、山田別荘の女将の山田るみさんが興味を持ってくださったんです。それで、山田別荘のスタッフルームだったこの場所を改装することになりました。熊本や長崎から5人の大工さんを呼んで、20日間位で作ったんですよ。とにかくおもしろい大工さんたちで、イメージを伝えると、古材やあるものを使って想像以上のものを作ってくれました」園さんは楽しそうに回想し、笑みを浮かべる。
時刻はちょうどお昼すぎ。お腹がすいたので『Cafe BASARA』の『2種盛りカレー』を注文した。
この日は豚軟骨のキーマカレーと、スリランカレンズ豆のカレー。お皿いっぱいに広がるカレーにはいろんな色や形が溶け込んでいる。どんな味がするんだろう。
さっそく一口含むと、楽しくなってくるような、心の底からムクムクと塊がのぼってくるような、味わったことのない感覚。まるでいろんな触感が舌の上で踊っているようだ。
「豆カレーにはかぼすをかけるとおいしいよ」と園さん。その通りに絞ってみると、味が変わり、また違った風味が楽しめる。どうやったらこんな料理のアイデアが浮かぶんだろう。
心地よい衝撃が頭から体を駆け抜け、心の中のもやもやをササっとお掃除してくれたようなすがすがしさが広がる。
友人が頼んだ『スペシャルランチ パテ ド カンパーニュ』は、カレーとは違った趣のあるお洒落なプレート。
盛り付けられた料理たちは、食べるのがもったいなくなるほど目にも鮮やかで美しい。
園さんの料理はまるで宇宙のよう。広くて、圧倒的で、とにかくパワーをもらえる。
エネルギーが足りなくなったら、心がどんより沈んでしまったら、ここに来れば絶対元気になれる。自分の感覚を取り戻せる場所、それが『BASARAHOUSE』だ。
だからアーティストたちが集まってくるんだろうな、そんな感慨に耽りながら時が過ぎていった。
住所 | 大分県別府市北浜3丁目2−2 |
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営業時間 | 【Cafe BASARA】 木・金・土 11:00~18:00 日・月 11:00~15:00(イベントにより時間が変わります) ※ラストオーダーは終了30分前までです。 |
電話番号 | 0977-24-2121 |
駐車場 | なし |
その他 | ※曜日や時間によってメニューやお店が変わります。 【御萬歳 満知壽 】(おばんざいまちす) 金・土・日 21:00〜24:00 【Sandwich B】 火・水 10:00〜16:00 詳しくはBASARAHOUSEのFacebookをご覧ください。 |