本当にここにあるのかな。住宅街の中を歩き、ちょっと不安な気持ちになり始めた頃、たくさんの樹々にまるで隠れているかのようにたたずむ『cafe 豆』を見つけた。カランカランと低めに響くドアベルの音とともに、女性の店主さんが笑顔でお出迎えしてくれた。
2方をガラス窓に囲まれ、柔らかな日差しと庭の緑をたっぷり取り込んだ店内。こぢんまりしているのに窮屈さはまったくなく、でも開放的すぎずちょうどいい。お庭にはお店を建てる前からあるというレンガの塀があり、独特の雰囲気を醸し出している。
色も形もさまざまな椅子の中から、座り心地のよさそうなものを選んで腰かけると、なんだか時間の流れがいつもよりゆっくりになったような気がする。長居したい気分になって、携帯電話をしまい、バッグから読みかけの本を取り出した。
コーヒーはまろやかな深煎りと、すっきりした中煎り、そして月替わりの3種類があるという。「コーヒーは冷めるとエグ味や雑味が出ちゃうこともあるんですけど、私は冷めてもまろやかなコーヒーが好きなんです」と店主さん。
コーヒーとワッフルを注文し、深く香ばしい香りに包まれながら、本に目を落としてしばらく待つ。
手作りの温もりを感じる器で、コーヒーとワッフルが運ばれてきた。
「お菓子は作ることよりも食べるのが好きなんですよ」と柔らかに微笑む店主さん。聞けば、おかし作りはほぼ独学なのだという。
さっくりとしたワッフルに濃厚なチョコレートソースをたっぷり回しかけ、キャラメルアイスクリームを添えて口に運ぶ。幸せな瞬間。
月替わりのコーヒーは後味がすっと心地よく、舌の上をするするっと流れていくようなすがすがしさがある。
コポコポ、しゅんしゅん、カチャカチャ、ざわざわ。いろんな音が混ぜ合わさって、耳障りがいい。
ここは時間の流れが違うエアポケットだ。店主さんが「お客さんは、みんなのんびりゆっくりしていきますね」というのも納得だ。
すっかり長居してしまった。名残惜しいけれど、そろそろ行こう。
お会計を済ませて扉を開けると、外には柴犬のまるこちゃんが待っていた。つぶらな瞳で見つめられ、ますます立ち去りがたい気持ちになる。
木のトンネルをくぐれば、いつもの見慣れた別府の道路へ出て日常へと戻ってしまった。少しだけ現実から離れたいときに、こっそりと出かける場所になりそうだ。
住所 | 大分県別府市上田の湯町3-22 |
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営業時間 | 13:00~19:00 |
休日 | 月曜日、火曜日、日曜日 |
電話番号 | 050-5318-3495 |
駐車場 | 2台 |