旬の味と、料理人の技や心意気が詰まった大皿料理

 

お店の外壁に小さく取り付けられた窓を覗き込むと、1匹のフグがこちらに近づいてきた。まさかこんなところに、水槽があるとは思いもしなかった。「僕が教え込んだからね、しっかりお客さんにサービスしてくれますよ」。店主の冗談を聞きながら水槽を眺めていると、また別の魚もこちらに近づいてきた。本当によく教え込まれているかのように、サービスのいい魚たちだ。

 


小料理屋『ちくでん』は、昭和41年のオープン以来、評判が評判を呼び、たくさんのお客さんがやって来る繁盛店となった。料理の提供が追いつかないほどの人気ぶりに、「おまかせの盛り合わせ料理」を頼まれるようになり、現在の大皿料理を出すスタイルが定着。宴会や団体のためのコース料理を提供するお店になった。

 


「小さい頃、カニが美味しいって言ったら1週間、夕飯にカニが出てきたこともあったよ」そんな思い出を話してくれたのは、現店主の坪井哲一さん。今でも、ご両親が繁盛店を切り盛りしていた頃のことをよく覚えているという。18歳で料理の世界に入り、大阪や大分の和食店での修行を経て、21年前別府に戻り両親の後を継いだ。一番いい旬のものを提供したい、との思いで料理を作り続けている。

 


大人の顔の倍以上ありそうな、どっしりした大皿。そこに堂々と盛られるのは、蒲江港や地元の魚屋から仕入れた上質の魚介類。刺身をはじめ、焼き物、煮物、巻物などなど盛りだくさんだ。季節ごとに最上の旬の味が勢揃いしている。人数、予算、好みによって内容はカスタマイズもできる。何が出てくるか、目の前に置かれるまでわからないワクワク感も、大皿料理の醍醐味の1つだろう。

 


プリプリの新鮮なお刺身はもちろん、サクっとした揚げ物、蕎麦の海苔巻き、具材の奥まで味が染みた煮物など、味も食感もバラエティに富んでいる。

 


豪勢に盛られたおかずのボリュームに、残さず食べられるか心配になる人も多いとか。しかし意外にも締めのおにぎりとお味噌汁まで、しっかり食べていく人がほとんどだという。ちょっとずつ、あれもこれも食べたい、そんな欲張りさんにぴったりだ。

 


今は大皿料理と同じ内容を1人分ずつ盛りつけたスタイルも試している最中だという。旬の食材を1人であれこれ味わうのも、贅沢かもしれない。懐石料理よりも気軽だけど、味はしっかり満足できるもの。そんな料理を目指し、店の基本である大皿料理を進化させている。「これからも、価格以上に満足できるものをお客さんに食べてもらいたいですね。絶対に損はさせませんよ」と、自信満々の坪井さん。旬の味と、料理人の技や心意気が詰まった大皿料理は、これからも別府の食通たちを唸らせていくのだろう。

ちくでん

ちくでん

住所〒874-0920 大分県別府市北浜1-6-1
営業時間17:30~
休日不定休
電話番号0977-25-2277
駐車場駐車場は「平成ガレージ」をご利用ください。 ※2時間分のサービス券を差し上げます。