おばあちゃんから受け継いだ味

サクサク、ふわり。ほろりと柔らかい絶妙の食感。大分の特産品かぼすを絞ると、キリリと爽やかな風味と、鶏肉にしっかりと染み込んだにんにく醤油の味わいがたまらない。『まやかしや』のオリジナルとり天だ。大分の郷土料理であるとり天は通常ムネ肉が使用されるが、ここではモモ肉が使われている。また、からしと酢醤油をつけていただくのが一般的だが、『まやかしや』のオリジナルとり天は下味がしっかりついているので、つけダレは不要。ジューシーな鶏モモ肉ながら脂っこくなく、箸が止まらない。

 


「これはおばあちゃんの味なんです。とり天といえば、僕の家ではこれが定番。おばあちゃんの姿を見て作り方を覚え、記憶している味を再現しています」

『まやかしや』店主の北川裕明さんは、大阪の大学を卒業し別業界に身を置いた後、別府に戻り海産物屋の3代目として働いた。子どもの頃は早朝から深夜まで忙しく働く両親のもと、自分でご飯を作る機会も多かったという。そのなかで身につけた料理の数々を今はお店で提供している。

 


現在はムネ肉のとり天もメニューに加わっているが、こちらも評判がいい。驚くほどしっとりしていて、とにかく柔らかいのが特徴だ。その秘密は大分県産の鶏と揚げ方。お客さんにもよく聞かれるという。

 


カウンターの奥には、ずらりと並んだ焼酎の瓶。大分県産のものを中心に揃えている。麦焼酎と言っても、香ばしいものや味が濃いもの、ウィスキーのような香り高いものなど、風味や味わいがそれぞれに違うという。蓋をとって匂いを嗅がせてもらうと、香りだけでわかるほど個性が際立っていて驚かされた。

 


店主と妻の法子さん、2人の息がぴったりで会話も楽しい。お酒やメニューの話はもちろん、温泉の楽しみ方、今と昔の別府についてなどとりとめもなく話題が広がる。それらをやんわりと包んでくれる大らかさが心地良くて、思わず長居してしまう。

 


JR別府駅を背に、ゆるやかな駅前通りの坂を下ること1~2分。常連さんも観光客も、気軽に立ち寄れる場所だ。ここで2年間、以前は駅の目の前で15年間営業してきた。お昼は定食のみの提供だが、夜は一品料理もメニューに加わる。絶品のとり天と、仲良し夫婦の笑顔にまた会いたくなるお店だ。

まやかしや

まやかしや

住所別府市駅前町13-4ステーションホテル1F
営業時間11:30~14:00(オーダーストップ13:30)※食材がなくなり次第終了することがあります。
18:00~21:00(オーダーストップ20:00)
休日日曜日、月曜日、祝日不定休
電話番号0977-24-8715
駐車場なし