「いただきます」を噛みしめる

別府の老舗百貨店『トキハ 別府店』の正面玄関の左手に伸びる道を少し歩くと、黒地にぷっくりしたバナナのイラストと「バナナジュース」と書かれた看板が目に入る。こんなところにお店があるのかと、階段を上ってみる。駒が貼り付けて将棋盤に見立てた扉には、おにぎりの文字。なんとも不思議な場所にたどり着いてしまった。『将棋処と (ときん)』と併設している『おにぎりかふぇ』は、まさに隠れ家だ。

扉を開けると、想像とは違った世界が広がっていた。たくさんのぬいぐるみと絵本、淡い色合いが印象的なイラストの数々。店内のあちこちにちりばめられたおにぎりモチーフが、控えめに存在を主張している。手作りのかわいらしい空間だ。

 


店主の白井さんは「お店を出して8年目ですが、『ここにこんなお店があったなんて、知らなかったわ』と、よく言われます」と微笑む。将棋しながらつまめるものを提供したいと考え、『おにぎりかふぇ』を始めた白井さん。

 


お漬物をつけたり、自家製の味噌を作ったり、ピアスまで手作りしてしまう、創造性豊かな白井さん。別府の定食屋で料理を教わり、オリジナルで培った技術で腕を振るう。2013年のオープン以来、人が食べるもの、食材には並々ならぬこだわりを持っているのだそう。できるだけ無農薬で大分県産や九州産のもの、家族にも安心して食べられるものを提供したいと料理を作っている。

 


白井さんは「無限にアレンジできる点もおにぎりの大きな魅力」と言う。そのおにぎりを一口頬張ると、歯触りの良さに驚いた。香り高い海苔には、小さな穴を開けることで、歯切れが良くなるように仕込んでいるのだという。むっちりして一粒ずつがしっかりした無農薬のお米ヒノヒカリは、大分市戸次の農家から仕入れている。丁寧な仕事やこだわりが、いい味を作り出している。

 


無農薬バナナジュースも人気の一品。瓶入り牛乳とたっぷりのバナナ、シンプルにいいものだけで作られている。早く飲まないと変色してしまうのは、余計なものを入れていない証拠。

 


「ゆっくりのんびり、手間ひまかけたお料理を提供しています。1人で作っているので、少し長めに待ち時間をいただくことだけは、ごめんなさい。ゆったり過ごせてもらえたら嬉しいです」と、優しい笑顔。
白井さんのご家族は、みんな温泉名人なのだそう。温泉のことをあれこれ教えてもらいながら、時間を気にせず過ごしてみたい。そんな気持ちになる、時間のゆっくり流れる穏やかな空間だ。

おにぎりかふぇ

おにぎりかふぇ

住所別府市北浜2-7-31もず屋ビル2F
営業時間11:00~18:00 ラストオーダー
休日月曜日、火曜日(祝日は営業)
電話番号0977-24-2555
駐車場なし