優しい黄色の半月型に、くじゅう連山を見立てたムムムのケチャップ文字。スプーンを入れるのを躊躇するほど、完璧なフォルムのオムライスだ。なめらかであまりにも綺麗な表面は、思わず指でつついてみたくなる。2mm程の厚く弾力のある玉子にくるまれているのはケチャップライス。シャキシャキたまねぎとウインナー、定番の具材だ。どこかで食べたような懐かしい味わいが口に広がる。
ドリンクは定番のメロンソーダで決まり。鮮やかな緑色のシュワシュワソーダの上に、まん丸のアイスクリームとホイップクリーム。てっぺんにはシロップ漬けのさくらんぼ。昔ながらの、誰もが想像する喫茶店メニューが目の前にある、ちょっと幸せなひとときだ。
『喫茶ムムム』は“古いけど新しい”をコンセプトにした、路地裏の喫茶店。40年以上喫茶店だった店舗を居抜きで借り、2016年から営業を開始した。世代や性別を問わず、地元住民も観光客も関係なく、多種多様な人々が集いそれぞれの時間を過ごしている。初めてでも入りやすく常連客も居心地が良い。マスターの廣瀬翔太さん、妻の真実さんが放つ、ゆるくて柔らかい雰囲気が人を呼び寄せているようだ。
アール・デコ調の壁や天井、カットが美しいランプシェードなど、時代を感じさせる内装も心を落ち着かせてくれる。モーニング、ナポリタン、ホットサンドなど、昔ながらの喫茶店らしいメニューが勢ぞろいしていて、リピートしたくなる。
コーヒーに合うスイーツも充実しており、ケーキやクレームブリュレには固定ファンが多いという。季節や時期によって微妙に品揃えが変わるので目が離せない。
「ここは食堂だったかな? と思うくらい、みなさんに食事を注文されます。料理修行は独学なんですけどね。もともとカフェは好きでしたが、京都に住んでいたときに古い喫茶店に通うようになり、その良さを実感しました。ただコーヒーを飲むだけではさみしいし、チェーン店にはない特徴があるお店っていいなと思ったんですよ。このお店にいると、今は使っていないカウンターの端が擦れて光っていたりして、不思議でおもしろいですよね」と、マスター。
定番メニューを出しつつ昔に固執せず、ただゆっくりと流れるようにあるお店。力を抜いてそのままくつろげる、貴重な時間がここにある。