パンは生き物

 

「パンは、目に見えない微生物を相手にしながら、その時々によって微調整を繰り返してできあがるものなんです。粉、塩、酵母、水とシンプルな素材だからこそ、追求すればするほど奥が深いですね」

生地が次々とかたち作られていく。丸くなったり、長細くなったり、ナッツやレーズンが練り込まれたり。繊細ながらも迷いのない手つきで、1つの生地から、いくつもの味も形も異なるパンが生み出されていく。

 


香ばしい香りに一帯が包まれ始めると、焼きあがりが近い。ブザーが鳴って窯を開けると、美しく焼き色がついて、つやつやと光るパンが出てきた。長年パンを作り続けていても、毎回心が踊るという焼きあがりの瞬間だ。

 


石垣東にある『mana bread』の営業日は週に3日ほど。噛み応えのあるハード系、しっかり食べられるお惣菜系、ふわふわ軽くて甘いおやつ系など、常時20種類ほどのパンが並ぶ。できる限り無添加の材料を使用し、フィリングの大半は手作りだ。“シンプルで体に良く、おいしいパンを届けたい”との思いが込められていて、それぞれの商品に熱烈な固定ファンがついている。開店と同時に、老若男女のお客さんがひっきりなしに出入りし、こぢんまりした空間でお気に入りのパンを選んでは去っていく。お店を出るときは、あふれんばかりの笑顔になっているのが印象的だった。

 


2009年の創業以来、1人でパンを作り続けているのは女性の店主。東京やハワイでパンの修行を積んできた。パン作りはいくつもの基本のレシピをベースにして、あらゆる点に気を配りながら進めていく。気温や湿度、天気や季節などの変化はもちろんのこと、時代の流れやお客さんの様子など、目に見えるもの・見ないものさまざまだ。これまで培った知識と経験、感覚をフルに稼働しバランスを取り、微調整してようやく完成する。

 


「『健康で食べやすく、香りがあるパンを作りたい』との思いから、長年かけて完成したのがお店の看板商品、カンパーニュです。サワー種は、ドイツから輸入した元種を自家培養して使っています。食べたときに重すぎずもたれない、そして食べた終った後にいい香りの余韻が残るんですよ。お店を始めた当時はあまり売れなかったんですけど、今ではレストランに卸したり、これを目当てに買いに来てくれるお客さんがいたり、ずいぶん馴染んできました」

 


東京と別府、生活も文化も違う土地では求められる商品も変化する。お年寄りや食べ物の制限がある人にも、安心して食べられるものを提供したい。けれども、味は譲れない。そんな強い意志を持って、自分が納得するまで改良を重ねている店主。最近では、体調を崩した友人からの依頼で減塩・低たんぱく質の食パンを作っているという。

「本当に美味しいって感じるものは、香りが高く、噛んでいると旨味がじわっと口の中で広がるんです。食べた後に体がちょっと喜ぶような、そんなパンを作りたい」と、店主は語る。

 

1つひとつのパンが、ありったけの想いを込められて焼きあげられる『mana bread』。シンプルだからこそ奥深いパンの世界を私たちに紹介してくれるかのようだ。

mana bread

まな ぶれっど

住所大分県別府市石垣東7丁目4-41
営業時間10:30~18:30
休日月曜日、水曜日、金曜日、日曜日 ※変更になる場合あり Facebook、Instagramをチェックしてください
電話番号0977-23-0306
駐車場2台
その他Facebook https://www.facebook.com/manabread2009
Instagram https://www.instagram.com/manabread2009/