インドを凝縮した一皿の魅力

普段の姿は会社員。夜や週末(たまに昼間も)、カレー屋に変身する男がいる。少々いかつい風貌ながら、喋れば気さくな水口 洋さんが営む『スパイス料理 Norary-Crary』は、別府市や大分市のさまざまな店舗で、間借りをしながら料理を提供する独特のスタイルだ。

 

 

水口さんの仕込みは、早朝3時から始まる。鶏ガラの余分なものを取り除き、油を塗って低温で焼く。次に少し温度を上げて焼いた後、野菜を煮ていた鍋で沸騰しないように4時間くらい煮ると、カレーのベースとなるフォンドボライユが完成。

 

 

ターリーは元々、北インドで「大皿」を意味する言葉だが、現在インドでは大皿にご飯と小鉢が乗った定食のようなものを差す。季節によって内容が変わり、夏には茄子のカレー、秋・冬にはマトンカレーやバターチキンカレーなどが提供される。この日のターリーの内容はヒヨコ豆のカレー『チャナマサラ』、マトンのパキスタンカレー『ローガンジョシュ』、バターチキンカレー『ムルグマッカニー』、チキンを煮込んだパキスタンのスタンダードメニュー『ムルグカラヒ』。そして、ヨーグルトに野菜が入ったネパール料理『ライタ』だった。『ライタ』を混ぜると風味が爽やかに一変する。

 

 

粘り気がなくさらさらと軽いバスティマライスを大皿に広げ、これらのおかずをお好みで混ぜ合わせていただくのがターリーの食べ方。パリパリとした塩せんべいのようなパパドゥは、細かく砕いて振りかけるとアクセントになり食感が楽しい。ボリューム満点の一皿で、おかずの混ぜ方や食べる順番で味が変わるのもおもしろい。人それぞれの食べ方があり、同じ料理なのに食べ方で違う味に変化する。インドそのものを凝縮したかのような、強烈な魅力を持つ料理だった。

 

 

別府のシンボルともいえる共同浴場『竹瓦温泉』の目の前にある『takeya』が、水口さんの生まれ育った場所。昭和40年代前半にはバーとして、後半になるとうどん・焼鳥・おでん屋として、両親が営業した店は大繁盛したという。その後は喫茶店となり、一時は水口さんのガレージとなっていたが、2005年から『takeya』をスタートし、現在に至るという。水口さんは小学生の頃からパソコンを自作したり、コーディングをしたりしていたというベテランエンジニアで、本を買って読み、自分でやってみる独学スタイルを貫いてきた。『ないものは作る』精神は、今でも変わっていないようだ。

 

「カレーもエンジニアも、理論的なところは同じですよ。でもカレー作りのほうが自分で好きにできて楽しいかな」と水口さん。現在はマトンの腸詰(ソーセージ)を開発中だという。また、インドの石焼窯であるタンドールも手に入れたとのこと。「3年後は定年になるので、それからは本格的にカレー屋になるかな」と笑う水口さん。次は何を仕掛けてくれるだろうか。

スパイス料理 Norary-Crary

すぱいすりょうり のらりくらり

住所大分県別府市元町15-7
営業時間イートインは以下の場所・曜日で対応しています
別府 cafe TAKEYA 水曜以外
大分 LLOYD 水 12:00-13:00
大分 VIVE LA VIE 水 21:00-26:00

前日予約いただけますとお待たせせずに対応ができますが、予約がありませんと少々お待ちいただきます