それぞれの夜に寄りそう

 

国道10号線沿い、ビルの一階にある『ROUTE10』。「カレー酒場」と書かれた看板に惹かれて扉を開くと、たくさんの酒瓶と古いポスターに囲まれた店内は、まるで秘密基地のよう。窓からは道路を挟んだ向こう側に海と、停泊中のヨットが見える。壁にある世界地図・日本地図には、これまで訪れた人たちの故郷にピンがびっしり刺してあり、異国の港のバーのような、不思議な雰囲気に包まれていた。

 

 

2009年の創業以来、国内外問わずさまざまな人が、それぞれの目的で立ち寄るお店。早い時間は食事のお客さんが多く、照明が一段暗くなる22~23時頃からはバーとして利用する人が多いという。客層は20代~70代まで幅広く、お酒はもちろん、ノンアルコールやソフトドリンクも充実している。デートに、仕事帰りに、温泉後の軽い一杯に、それぞれのお客さんそれぞれのワンシーンとして静かに存在しているようだ。

 

 

学生時代、カレーを舐めながら焼酎を飲んでいたという店主の首藤 篤さん。彼が試行錯誤の末生み出したカレーは、大量のたまねぎベースに野菜、マンゴーもいれて5時間以上たっぷり煮込んだ欧風カレーだ。人気の「ディップカレー」は、小ぶりのナンと濃いめのカレーがセットになったメニューで、お酒のつまみにちょうどいい。カレーにお酒とは意外な気もするが、焼酎、ワイン、ビール、日本酒、カクテルと何にでもマッチする味わいだ。濃厚で深いコクがあるのに爽やかなカレーにナンをディップしていただくと、後から辛さも追いかけてきて、ついつい食べ進めてしまう。

 

 

酒の肴としてではなく、飲みの締めにカレーライスを食べる人も多い。『ROUTE10』ではカレー以外にも、西洋料理店やバーで修行した首藤さんがこだわりの食事メニューを提供している。特にタンシチューはカレーと並ぶ目玉料理の1つ。コクを出すために9時間もかけて煮込んでいるそうだ。

 

 

「別府はのんびりしていて、ちょうどいいですね」そう言ってほほ笑む首藤さんは、なんと元プロレスラー。現役時代に国内外を巡業し、各地でおいしいお酒や料理に出合ったという。今は国内外からお店にやってくるお客さんと出会い、各地の話をするのが楽しい。もともと別府はジャズの町だったそうで、首藤さんは小さい頃の野外ジャズフェスティバルの様子や、盛りあがる町の様子を覚えているらしい。そんな記憶もあって、「ジャズを聴きながら食や酒を楽しめる店を作ったんですよ」と教えてくれた。

 

 

「飲食はね、一番身近な大衆娯楽なんですよ。食べるっていうのは、味だけでなく雰囲気や音楽なども体感して得られる経験ですから。その点は24年間続けたプロレスと通じるところあがるかもしれません」。プロレスラーを引退してもなお、周りを楽しませようという心意気は一貫している。「お客さん次第で、好きなようにいろんな使い方をしてほしいですね」と静かに笑った。

ROUTE10

ルートテン

住所大分県別府市北浜1-15-11 愛媛屋ビル1F
営業時間18:00~26:00
休日日曜日
電話番号0977-75-8272