野菜の底力

別府の湯けむりや海を眺めつつ、車を走らせる。多少道を間違えながらたどり着いた一軒家は、すべて植物性のメニューを提供するカフェ『Neoベジタリアンキッチン Shalom(シャーローム)』だ。

「3人に1人は迷ったとおっしゃいますよ」明るく出迎えてくれたのは、店主のひらい ゆうこさん。友人宅にお邪魔したような気分になる店内には、色鮮やかなタイルや洒落た陶芸作品がさりげなく置かれている。

 

 

11年前の病気を機に、食に興味を持ったというひらいさん。ベジタリアン料理家の先生と出会いOLを辞め、派遣として働きながら料理を勉強したという。大阪暮らしだったが、仕事の関係で別府での勤務が始まった。「最初、勤務先は大阪の別府(べふ)と勘違いしていたから、軽くOKしたんですけどね。まさか九州だとは思わなかったですよ」と笑う。しかし、新型コロナの影響でホテルが休業し、病気も再発。そのタイミングで移住と出店を決意しのだそう。

 

 

「もともと、料理は好きじゃありませんでした。でも、自分のためにベジ料理の勉強を始め、家族のためにも作るようになって。飲食の経験はありませんでしたが、学んだ知識を広げたいし、接客も好きだからと、お店をオープンすることに決めました。大都市の大阪よりも、別府でお店をやりたいと思ったんです。大分の人はフットワークが軽いですよね」。大きな決断をさらりと下し、軽やかでパワフルに行動するひらいさんには、別府の地がうってつけだったようだ。

 

 

人気メニューのタコライスは、うず高く盛り付けられた野菜がインパクト大。シャキシャキとした歯ごたえの生野菜に、自家製の豆乳マヨネーズが絡み合う。タコソースは、ごぼう、にんじん、たまねぎ、ひよこ豆、10種類以上のスパイスから作られており、さまざまな食感が楽しめ、植物性だけとは思えないしっかりめの味付け。自然栽培米の玄米も体によさそうだ。セットの汁物は、味噌汁からポタージュに変更もできる。この日のポタージュは「甘栗とあずきのポタージュ」。スープの表面には、クリームで描かれた美しい花が浮かぶ。ココナッツの風味が漂い、乳製品を使っていないとは思えないクリーミーさと、じんわりとした甘味が心地よい。

 

 

感動を伝えると「ベジ料理って、味が薄かったり、ボリュームが少なかったりというイメージがありますよね。だから私は、ベジではない方や男性にも満足していただけるよう、味もボリュームもしっかりしたものを心がけて作っています。野菜はなるべくオーガニックなもの、大分県や九州産のもの、そして旬のものを中心に使っています」と教えてくれた。体を大切にしてほしいとの思いから、最初にテーブルに出すのは、氷水ではなく白湯だ。食事前に冷たいものを体にいれると、消化の妨げになるのだという。これが意外にも好評で、2杯目も水ではなく白湯を飲む人がほとんどなのだそう。

 

 

「みんなもう少し体に気をつかってあげてほしいと思います。『Neoベジタリアン』は、食の垣根を作らない料理。宗教や信条を持った人、ダイエット中の人でも食べられます。また、肉食の人でも、誰も否定しません。誰もが楽しく食べてもらえたら、それが一番嬉しいですね。今後は料理教室や、東洋医学の体の部位を観察して診断する『望診』などもやっていきたいです」まだまだこれから、活動は広がっていく。

Neoベジタリアンキッチン Shalom

シャーローム

住所大分県別府市上平田町13組
営業時間モーニング 8:00〜11:00(L.O. 10:30)
ランチ 11:00〜(L.O. 17:00)
休日月曜日、第1・3火曜日、不定休 ※FBかインスタグラムをご確認ください
電話番号070-8401-6045
その他フェイスブック https://www.facebook.com/nvk.shalom/
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