予想外の行き先へ

 

JR別府駅には、いつも「旅」の気配がある。東口を出ると、バンザイをした油屋熊八の大きな銅像と手湯。写真を撮ったり、キャリーケースをコロコロと鳴らしながら歩いたり、ロッカーに荷物を入れたり、バスの時刻表とにらめっこしたり。旅の始まりに、自然と笑みがこぼれる人たちの姿があった。観光地・温泉地特有の空気が流れているようだ。地面を見ると「BusTicket」と書かれた赤のラインと、「Tourist information」と書かれた青のラインが2本並んで伸びている。青のラインをたどると『WANDER COMPASS BEPPU』に着いた。

 

 

英語の表記が多いため、入っていいのか少し悩む。外からしばし様子をうかがっていると、スタッフがお客さんに笑顔で対応している様子が見える。ひとりがこちらに気づき、声をかけてくれた。店長の児玉沙和さんだ。大分県臼杵市出身の児玉さんは、パっと弾けるような元気な笑顔の女性。気さくで話しやすい彼女の説明によると『WANDER COMPASS BEPPU』は「おせっかいな観光案内所」だという。「聞かれたことには、もちろん全力で返答しますが、さらにここでは、行こうと思っていなかった場所に行ける提案をしています」とニッコリ笑顔。それはどういうことだろう。

 

 

まずは、おすすめのカフェを聞いてみる。すると、サッと出されたのはお手製のカフェマップだった。「駅の近くならこことかここ、ご飯はこのお店がボリューミーで、電源があるのはちょっと歩くけどここがおすすめ」と、次々と情報が出てくる。話を聞きながら、その人の希望や好みに合う場所を探して教えてくれるのだが、その臨機応変っぷりがお見事。「ちょっとした空き時間に行ける場所や近くの温泉が知りたい、名物料理が食べたいなど、お客さんのニーズに応えるために、常にアイデアを考えてカタチにしています。オリジナルのマップや、2時間で行ける周辺散策モデルルートなどもありますよ」と、別の手作りマップや資料を見せてくれた。どれもその場所への「好き」が隠しきれず、あふれ出ている。

 

 

「私たちがおすすめする場所は、本当にお気に入りの場所だけなんです」の言葉どおり、とにかく案内に熱がこもっている。「あ、このお店が大好きなスタッフが今いるから呼んできますね」と、ほかのスタッフにも声をかけ、どんどんコアな情報が飛び出してくる。気づけば「ここに行った後に、その温泉にも行ってみようかな」という気持ちになっているのだ。そうか、これが “行こうと思っていなかった場所” に行けるカラクリなのかと、妙に納得した。

 

 

留学生アルバイトさんからベテランまで、スタッフの年齢も人種も多様。スタッフ同士もお客さんもその場にいる人みんながフラットで、気取らず安心して話ができる。「海外からのお客さんだけでなく、もちろん日本人の方もウェルカムです。誰でも気軽に立ち寄って、思わぬ出会いを楽しんでもらえたら嬉しいです」そう言って、送り出してくれた。振り返ると、いつまでも大きく手を振ってくれている。フレンドリーなスタッフの元気をもらい、これから始まる旅への期待感が、より一層膨らんだ。

WANDER COMPASS BEPPU

ワンダーコンパスベップ

住所大分県別府市駅前町12-13 えきマチ1丁目別府BIS南館
営業時間9:00〜18:00
電話番号0977-75-8716
その他https://wandercompass.jp/?beppu